意外と知られていない「福男選びのウラ側」
商売繁盛の神様「えべっさん」で知られる兵庫県の西宮神社では、「十日えびす」の10日、参拝一番乗りを競う恒例の「福男選び」が行われた。毎年おなじみの行事だが、意外と知られていない「福男選びのウラ側」について、「news every.」小西美穂キャスターが解説する。
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■「福男選び」だけど女性の参加もOK!
この行事は兵庫県西宮市にある西宮神社で開かれている。商売繁盛の神様・えびす様がまつられている神社の総本社だ。毎年、十日えびすというお祭りがある1月10日の午前6時にスタートする。本殿に早く到着した順に一番から三番までをその年の福男として認定するもの。
その由来は鎌倉時代にまでさかのぼるといわれている。開門と同時に本殿まで走る「走り参り」というのがあったそうだ。今のように三番までを福男として競うようになったのは1940年(昭和15年)だという。
福男選びには女性も参加できる。ただ、これまで三番以内に女性が入ったことはない。さらに、年齢制限もないので誰でも参加できる。
■全長230メートル…最大の難所は?
スタート地点の表大門からゴールとなる本殿までは全長230メートル。今年の福男の男性は27秒67で走った。
途中には難所もある。まずはスタート直後、コンクリートから石畳に変わる場所では、足元の変化に対応しきれず転びやすい。そして、最大の難所は“魔の直角カーブ”と呼ばれている直角のカーブ。そして、その先に生えている木もくせものだ。直角のカーブを曲がった後に生えている木をよけようとする人と、後ろから来た人が接触して、転倒するケースが相次いでいる。
最後の難所はゴール地点。ゴール目前で転んでしまう人がいる。2003年に一番福を争っていた2人が本殿に着いたところ、最後の最後でまさかの転倒をしてしまった。
■くじ運も大事!一番福の男性が引いた番号は?
実はほかにも、自分ではどうにもできない大事な要素がある。それは「運」。走る前にスタートの位置を決めるくじ引きが行われる。このくじ引きで、先頭に並ぶ108人と、その後ろの150人が決まってしまう。外れた人はさらにこの後ろに並ぶ。
場所は、くじ引きで当たった順に好きなところを選べる。今年、福男になった男性は、くじ引きでは8番だったが、2列目の真ん中を選んだ。参加条件に年齢制限はないが、先頭集団は大変危険なので、くじ引きは中学生以上が対象となる。
実際、福男になるとどういうことがあるか。まず、一番福から三番福までは賞品がある。福男の認定証、木彫りのえびす様、お酒、米1俵など。ただ、多くの人は賞品目当てではなく、「福」という御利益を求めて参加している。西宮神社によると、「福男」になると、自分だけではなく周りの人に福を分け与えるといわれている。
■被災地でも受け継がれる「福男・福女」
福を得るための行事はほかの地域にもある。岩手県釜石市で行われている「韋駄天競走」という行事は、震災で津波が到達した街をスタート地点とし、高台にある寺をゴールとして駆け上がる。1位の人が福男や福女の座をつかむというもので、津波から避難するという教訓を根付かせるために始まったという。兵庫の西宮神社も公認している。何百年も続いてきた伝統行事が形を変えて、被災地の未来につながるものとして受け継がれてほしい。