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世界最古のパン 食文化が農耕発展の礎に?

2018年7月24日 15:41
世界最古のパン 食文化が農耕発展の礎に?

世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「世界最古のパンみつかる」。考古学者で法政大学准教授の芝田幸一郎氏に聞く。

ロイター通信などによると、ヨルダン北東部にある遺跡から、約1万4500年前に焼かれたと思われるパンが黒こげの状態で見つかったと、コペンハーゲン大学の研究チームが発表した。

これは、人類が農耕を始めるより前からパンを作り始めていたという発見になるということだ。ネット上ではこんな声があがっていた。

「1万年以上前とはすごい」
「どうやって思いついたんだろう」
「いずれにせよ興味深い」


――芝田さん、この発見からどういったことが導けるのでしょうか。

農耕が始まる前に野生の穀類などを使って、特別な食べ物としてのパンのようなものが焼かれていたという大発見です。

これまでは、まず十分に発達した農耕があって、それに伴うかたちでパンという流れだと考えられていました。しかし、今回の発見では流れが逆になってしまいます。

おもしろいのは、パンを食べるために農耕が必要になった…つまりは、食文化が知識、技術、あるいは労働組織の発達などを促したという解釈が可能になることです。

同じような現象を、実は、私の大先輩たちである日本の調査団もペルーで発見しています。ペルーの場合は、土器が登場する前、農耕が十分に発達する前に、神殿のような大型の公共建造物が出現しています。

共通するのは経済的基盤、余剰生産が、必ずしも高度な文明を生み出すわけではないということになります。


――つまり、パンが食べたいから農耕が発展してきた。そして、神殿を建てたいからそれ以外のインフラが整ってきたということなのでしょうか。

端的に言うと、そういうことになるでしょう。


――おもしろいですね。今回の発見は、考古学的にもかなり興味深いものになってきそうですか?

はい。私のようなアンデスを専門にしている人間にとっても、今回の発見は非常に興味深いものになっています。


■芝田幸一郎氏プロフィル
考古学者・法政大学准教授。ペルー考古学を専門とし、主にアンデス文明の発掘調査に携わってきた。3000年前の神殿から、ジャガーや巨人などがあしらわれたレリーフを大量に発掘。奇跡的な保存状態で、色も当時のまま保存されているものもあり、“大発見”と評された。


【the SOCIAL opinionsより】