この3年間で“約10倍”に 福島県でトラフグの漁獲量が急増 ただ資格もつ調理師が足りず… なぜ増えた?
今、福島県で高級魚「トラフグ」の漁獲量が急増しています。この3年間で約10倍になるほどの増加ぶりに、地元ではトラフグの調理人が不足する事態にもなっています。ほとんどとれていなかった地域でトラフグが増えた理由について、専門家は「海水の水温の上昇」によると推測しています。
◇
厚切りでも白く透き通ったフグの刺し身。あごの部分は、スダチがよくあうという唐揚げにして楽しめます。東京・銀座の飲食店「ふぐ福治」がこだわって仕入れていたのは、大分県産の天然物の「トラフグ」です。
ふぐ福治 矢菅健さん
「これから10月半ば過ぎら3月いっぱいまでが、一番おいしいです」
これからが、まさに旬というわけです。
◇
トラフグは、先週に山口県下関で行われた初競りで、天然物が1キロあたり1万6000円の値をつけるほどの高級魚です。その天然のトラフグの漁獲量が急激に増加している地域が、東北の福島県です。
相馬市の漁港では4日、丸々と太ったトラフグが水揚げされていました。大漁のように見えましたが、4日は「少ない」ということでした。それもそのはずで、近年、トラフグの漁獲量が急増しているのです。
福島県水産資源研究所によると、2018年までの福島県での漁獲量は1トンにも満たない状態でした。しかし翌年以降に増加し、2020年は6トン超えになりました。漁船が増えたこともあり、去年はなんと27.8トンと、この3年間で10倍に激増しているのです。さらに今年は、漁が始まった先月だけでも10トンと、去年を上回るペースで漁獲量が増えているといいます。
相馬双葉漁業協同組合 ふぐ延縄操業委員会・石橋正裕委員長
「“希望の光”と思ってるほど、魅力のある魚です」
その“希望の光”に新たに名付けたのが…「福とら」です。
相馬双葉漁業協同組合 ふぐ延縄操業委員会・石橋正裕委員長
「“福”島に“福が来る”という意味合いをもって、 『福とら』と名付けました 」
今年からトラフグをブランド化して、新たに売り出したのです。そのため、観光協会では急ピッチで準備が進められていました。PR方法を模索しているということですが、課題も多いといいます。
相馬市観光協会 荒秀明事務局長
「フグを食べるという文化がないものですから…」
フグの食文化が浸透していないことや、フグの毒を取り除ける資格を持った調理師が少ないため、市内で食べられる店も5軒ほどしかないといいます。
相馬市観光協会 荒秀明事務局長
「まずは食べていただいて、どういう味か知っていただいて、その上でブランド化を皆さんで盛り上げていけたらなと」
今月中にチラシをつくり、地元の人や観光客などへの周知につなげたいということです。
◇
盛り上がりをみせる一方で、ほとんどとれていなかった地域でなぜ、トラフグが増えたのでしょうか。
福島県水産資源研究所 佐久間徹副所長
「気候変動によって、海水の水温が上昇したということが考えられます」
トラフグは、日本海側の秋田付近や太平洋側の東京湾にも生息しているといいます。これらの地域のトラフグが、海水温の上昇している福島付近まで回遊してきた可能性があるのではないかといいます。
福島県ではトラフグの漁獲量とともに、どこからやってきたのかなどを今後の調査で明らかにしたいということです。