令和の皇室像~2020年のゆくえ
2019年、およそ200年ぶりの天皇退位による代替わりを経て、新しい時代を迎えた。天皇陛下は新年を迎えるにあたり、「折々に温かい祝福を頂く機会も多かったこの1年は、私にとっても皇后にとっても誠に感慨深いものでした」と振り返られたが、一連の即位に伴う行事を終えて、2020年、本格的に新しい令和の皇室の活動がスタートする。
上皇さまの「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていく」ことを願われたお気持ちの表明から3年半。天皇が存命のうちに明るいムードで行われた今回の代替わりでは、天皇皇后両陛下のご活動とともに、世界に唯一残っている「元号」というものや、平安絵巻のような代替わりの儀式にも関心が寄せられ、皇室の歴史に触れる機会も多かったといえる。
一方で、儀式や一般参賀に並ばれる皇族方を見ると、男性皇族の少なさは一目瞭然だった。今の制度では、女性皇族は結婚すれば皇族の身分を離れることから、代替わりの一連の行事は、「皇族数の減少」と「安定的な皇位継承」が差し迫った課題として目に見える機会ともなった。
12月に退任した山本信一郎前宮内庁長官は、これからの皇室を考えていく上で「伝統と変化」というキーワードをあげた。「これまでの良き伝統をしっかりと守りながら、新しい柔軟な発想に立った知恵を絞っていく」とし、制度的な問題は政治の場の議論であるとして言及は控えたが、可能な限りの協力をしていくという宮内庁の立場を強調した。伝統とは何で、何を変えていくのが良いと思うのか、天皇や皇室が日本の中でどういう存在なのかを改めて考えさせられる代替わりだったのではないか。
【2020年主な予定】
2020年の皇室の主な予定をあげると、まず、元日は、陛下は午前5時半から、新年に国の安寧を祈る宮中祭祀(さいし)「四方拝」などに天皇として初めてのぞみ、その後、両陛下は、新年を祝う儀式にのぞまれる。
1月2日には、皇居で新年一般参賀が行われ、ここには上皇ご夫妻も姿を見せられる。代替わり後、公の場で両陛下と上皇ご夫妻が並ばれるのは、初めての機会となる。
上皇ご夫妻は、3月末までに港区高輪に引っ越される予定で、高齢となっているだけにご体調も心配されている。
2月23日は陛下の60歳の誕生日で、記者会見が行われる。
4月19日には、秋篠宮さまが皇位継承第一位の皇嗣の立場となられたことを公にする「立皇嗣の礼」が行われる。
婚約が延期されている秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまと小室圭さんについては、結婚に向けた行事を2年後に延期するという発表から、2月でまる2年を迎えることになる。父の秋篠宮さまが誕生日会見で、「何らかのことは発表する必要がある」と話されたことで、結婚について、どのような発表がされるのかが注目されている。
7月にはいよいよ東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開幕し、陛下は両大会の名誉総裁を務められる。
【今後の両陛下のご活動】
両陛下は、2019年の年末に、強いお気持ちから台風19号などで甚大な被害を受けた宮城県と福島県を見舞ったが、今後も被災地に寄り添う気持ちを行動で示していかれると思われる。
皇后さまはいまだ療養中であり、回復の途上であるとされているが、令和初の国賓として来日したアメリカのトランプ大統領夫妻や、即位を祝うために来日した外国要人への対応が報じられ、元外交官のキャリアを持たれる皇后さまの国際親善に関心が高まった。
世界の王室には、両陛下が懇意にされている同年代の国王王妃らがいて、陛下はライフワークの水問題を通しても世界の専門家とつながりが深いので、今後、両陛下の国際的な活動も注目される。
陛下は天皇として初めて迎える新年のご感想を「新しい年が、日本と世界の人々にとって幸せな年となることを心より願いつつ、務めを果たしていきたいと考えています」と締めくくられた。
2020年、令和の皇室はどう歩むのか、その姿がよりはっきりと見えてくる1年になりそうだ。