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福島第一原発“処理水”放出へ…風評被害に懸念 “宝の海”守る…漁師の闘い「諦めるわけにはいかない」

2023年3月9日 18:52
福島第一原発“処理水”放出へ…風評被害に懸念 “宝の海”守る…漁師の闘い「諦めるわけにはいかない」

豊かな海が育む福島の魚。地元の漁師にとって、福島第一原発事故からの12年は風評被害との闘いでもありました。藤井キャスターが4年ぶりに福島県相馬市の鮮魚店を訪ねると、店に並ぶ鮮魚の8割が福島県産に戻っていました。県外からの客も戻る中、漁業関係者は今、政府が打ち出した決定に大きな不安を抱いているといいます。

   ◇◇◇

先月24日、藤井キャスターは4年ぶりに福島県相馬市の鮮魚店を訪ねました。

藤井キャスター
「ここに活気が戻ってきているというのは、すごくうれしいです」

店頭に並ぶのは、地元で水揚げされたばかりの魚介類。“常磐もの”と呼ばれるブランドです。震災から約12年がたち、店に並ぶ鮮魚の8割が福島県産に戻っていました。

“常磐もの”のヒラメをいただいてみると――

「私が食べたヒラメ史上一番、脂がのっていて本当においしいです」

県外からの客も戻ってきました。

横浜から来た客
「シラウオがすごく新鮮だという話だったので、買ってみました」

カネヨ水産
小野芳一社長
「(福島にとって)明るいニュースが増えてきた中で、観光のお客さんが少しずつ増えてきた」

その“常磐もの”が水揚げされる松川浦漁港で、藤井キャスターが再会したのは松川浦漁港の漁師、高橋通さん(67)です。この日、主に水揚げされたのはサバ。“船を出し魚をとる”それがかつては当たり前の日々でした。

   ◇◇◇

震災3日後、福島第一原発で発生した事故により、福島の人たちの生活は一変しました。

藤井キャスターが初めて高橋さんに出会ったのは、事故の2年後、試験操業で週に1度だけ漁が許されていた時期でした。

松川浦漁港の漁師・高橋通さん(2013年3月)
「自分の子どもたち、孫たちに昔の“宝の海”を戻してやりたい」

高橋さんも、長男の卓己さんらと共に船を出していました。しかし、この年の7月に原発の汚染水が流出していることが判明し、試験操業は中断されました。

2013年9月、再び藤井キャスターが訪れた時には、海から揚がったのは断熱シートのようなものや、袋のようなものなど…。高橋さんは漁場の回復に向け、海に漂うガレキを回収する日々を送っていました。

   ◇◇◇

震災から12年。漁に出られるようになった今、新たな問題が立ちふさがりました。それは、原発の“処理水”を放出するということ。政府は今年の夏にも放出を開始する見通しです。

藤井キャスター
「処理水が放出されるという方向性です。これについては、どうお考えですか?」

漁師・高橋通さん(67)
「反対は反対です。(処理水を)流してからだって反対ですね。放流して何かあった時には、我々のせいにされてしまう。あなた方が認めたからこうなったんだって」

福島第一原発の敷地に並ぶ約1000基ものタンク。汚染水を特殊な設備などに通し、大部分の放射性物質を取り除いた“処理水”が貯められています。しかし、水と性質が似ている放射性物質「トリチウム」は最後まで取り除くことができません。政府や東京電力は、基準よりも大幅に薄めた上で海に流すため、安全性に問題はないと説明しています。

それでも反対の理由は――

藤井キャスター
「一番心配していることは何ですか?」

漁師・高橋通さん
「やっぱり“風評”ですね。やっと落ち着いた頃に、また『今年は流します』という話が出てきて」

1番の懸念は“風評被害”。政府は風評被害が起こらないよう丁寧に説明していくとしていますが、高橋さんは「そこはどこまでも(政府とは)平行線で行くと思います。(消費者の)信用を得るためには、やっぱり本当に何でもないかというのは、我々の努力にかかっていると思っています」と話しました。

震災前のように戻った豊かな海。それを残したい理由が高橋さんにはまた1つ増えました。孫の爽来さん(18)が去年、高校卒業後、あとを継ぐと決めたのです。

漁師・高橋通さん
「(漁師になるのは)想像はしていたんですけど、現実になるとやっぱりうれしい」

藤井キャスター
「『おじいちゃん』と呼んでいるんですか?」

高橋さんの孫・爽来さん
「『じっち』です」

藤井キャスター
「じっちは厳しいですか?」

爽来さん
「全然厳しくない」

“海が漁師を一人前に育ててくれる”高橋さんはそう話していました。

“宝の海”を孫、そして未来に残したい。高橋さんは「これからも“風評”はついて回ると思います。諦めるわけにはいかないですから、闘っていくつもりです」と胸の内を語りました。

“処理水”の海洋放出は、漁業関係者の十分な理解が得られぬまま、その時が刻一刻と迫っています。

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