深刻…名物の駅弁ピンチで 新たな動きも

旅の楽しみのひとつがピンチとなっています。旅行や出張で駅や鉄道を利用する人が激減し駅弁業界も深刻な影響を受けています。この苦境に手をこまねくだけではならないと新たな戦略に打って出る駅弁業者も出てきています。
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タイの身を細かくほぐし、ほんのり甘く味付けをした小田原名物の「鯛めし」(830円・税込み)。100年以上、旅行客などに愛され続けている駅弁です。しかし、鉄道利用者が激減し、大きな打撃を受けているといいます。
東華軒 広報・荒木拓郎さん「自粛ムードが続く中、かなり売り上げが落ちてしまって、厳しい状態ですね」
例年、今の時期は稼ぎ時だといいますが…去年と比べて売り上げは3分の1ほどに。
11日に工場を案内してもらうと――
東華軒・荒木さん「本来であればこちらのレーンも一緒に動いて稼働しているところなんですけど」
注文が減り、製造レーンは半分しか稼働していません。この厳しい状況をなんとかしようと始めたのが…
東華軒・荒木さん「駅弁が出ないからこそお昼のお弁当を地元の方に宅配するサービスを2月から始めました」
地元の学校や企業へのお昼のお弁当のデリバリーです。メニューは日替わりで、仕入れる食材や調理工程が毎日変わり、駅弁の製造に比べ苦労も多いといいます。それでも…
東華軒・荒木さん「駅弁の売り上げが落ちてる分、雇用を守るために、新たな配達弁当を始めて、なんとかコロナを乗り切ろうと動いています」
新幹線乗車率が去年のおよそ5パーセントと利用者が激減した今年のゴールデンウイーク。全国で90の駅弁事業者が加盟する「日本鉄道構内営業中央会」によりますと、「売り上げは業界全体で7から8割減少、今は未曾有の危機を耐える時」「ただ、このままの状況が続くと廃業する業者が出てくる可能性もある」と、危機感を募らせていました。
栃木県宇都宮市で130年近く駅弁を作り続けている会社でも…
松廼家 営業部長・星野至紀さん「本当に甚大な被害で(売り上げが)1割を切るような時もあります」
この事態を打破しようと取り組んでいたのが、新商品のカレー弁当の開発です。特徴は――
松廼家・星野さん「“きぶな”の形の黄色いご飯を食べることによって無病息災にあやかれたらなと」
「黄鮒」とは無病息災の御利益があるとして、宇都宮に古くから伝わる伝説の魚のこと。地元の老舗漬け物メーカーとタッグを組み、カレーに刻みショウガを入れるなど、健康面にも気を配ったといいます。全部で4種類あり、「黄鮒」の独特な色合いを表現。
松廼家・星野さん「以前のようなにぎわいが戻ってきてくれたらなと。皆様の健康を祈念しながら日々製造していけたらと」
今後も定番商品として販売を続けるといいます。
こうした中、兵庫県神戸市にある老舗の駅弁業者では、自宅でも気軽に旅気分を味わえるサービスが登場。
淡路屋 常務取締役・柳本雄基さん「オンラインの注文で皆様のご自宅に宅配するサービスを始めた」
その名も「自宅で駅弁!旅気分!キャンペーン」です。5000円以上購入し、一定条件を満たせば、送料が無料に。
1番人気はたこつぼ風の陶器に入った「ひっぱりだこ飯」(1080円・税込み)。さらに――
淡路屋・柳本さん「いったん休止させた商品を復活させたものがありまして」
それがこちらの「豚々拍子」(1100円・税込み)。なんとも愛らしい見た目ですが、復活の理由については――
淡路屋・柳本さん「目が合った瞬間こちらが笑ってしまうような商品ですので、巣ごもり生活でストレスもたまっているでしょうから、それが少しでも緩和されれば」
駅弁全体の売り上げは1割ほどにまで落ち込みましたが、このキャンペーンは先月に比べ、注文が2倍以上に伸びているといいます。
今後については――
淡路屋・柳本さん「人が集まるところで駅弁は需要があったので、駅弁自体の需要がなくなってしまう可能性もあるので、そうならないように何かしら取り組みをしていきたい」
11日からは地元で駅弁のドライブスルー販売も始めたということです。