医療従事者に「エール」を!ビール売上寄付
「エールビール」で医療従事者に「エール」を――。三重県津市美杉町のホテル「美杉リゾート」が、敷地内のビール工場で作った地ビールの売り上げ30%を医療従事者に寄付する取り組みを始め、反響を呼んでいます。
■休業で行き場をなくしたエールビール
美杉リゾートは、新型コロナウイルスの影響で休業中。取締役でソーシャルイノベーション事業担当の中川果菜さんは「私たちのために闘ってくださる医療従事者の方々のために、ステイホーム以外で何かしたいと思って始めました」と話します。
販売するビールは、ホテルの敷地内にある火の谷ビール工場で作られたエールビールと呼ばれる種類のビール。本来は宿泊客などに出す予定でしたが、休業によりやむなく出荷取りやめとなり、タンクに貯蔵されていたといいます。
医療従事者へのエール(応援)の意味を込めた、エールビールということで「Yell for Japan 」と名付けて瓶詰め。
ビールのラベルは医療従事者を応援する意味の「青」と日本を意味する「赤」をあしらいました。6本セットで3630円(税込み)から。通販サイトの手数料を引いた売り上げの30%を医療従事者に寄付することを決め、寄付先は検討中だとしています。
4月28日の販売開始以来、届いた注文は50件以上。個人だけではなく、企業からの発注もあったといいます。
中川さんは「もし今ある分で足りなければ、ビールを増産することも考えています」と手応えを感じています。
■苦境のホテル業「乗り越えられたら」
美杉リゾートは新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な影響を受けているといいます。
果菜さんの夫で社長の中川雄貴さんによると、美杉リゾートの3月の売り上げは例年の約半分。1か月すべて休業した4月は約9割減。ホテルは5月末までの休業を考えているとのことです。
雄貴さんは、いつ再開するかはまだ決められていないと言います。「休業要請が明けたとしても、旅行業がもと通りになることはしばらくないと思っています。この春は支出を徹底的に減らして、借入れをして、ひたすら耐え忍ぶことを考えるしかない」。
美杉リゾートのある三重県内では、宿泊業が深刻な打撃を受け、廃業する旅館も出てきているといいます。雄貴さんは「観光業にとっても大きな転換期だ」と語ります。
中川雄貴さん「当事者としては不安しかないのですが、乗り越えられたらすごい経験値になるとも思います。いろいろな気持ちが混じり合っています」
中川果菜さん「私たちの休業は、大切なお客様や社員、地域を守るための覚悟の休業です。売り上げの30%を寄付するのは、かなりギリギリの決断。この取り組みが、一人でも多くの、医療従事者の方々を支えるために何かしたいと思っている方に届いてほしいと思っています」