「正当な批判」と「ひぼう中傷」の線引きは? パリ五輪…相次ぐ“中傷” AI使った監視システム導入
日本選手の活躍で盛り上がっているパリオリンピックですが、SNSではひぼう中傷のコメントが後を絶ちません。実はIOCは、今回のパリオリンピックから初めて、AIを使ったSNSの監視システムを導入しています。SNSにコメントするとき、私たちはどういったところに気をつける必要があるのでしょうか。
■選手がSNSに投稿…その内容は?
藤井貴彦キャスター
「日本選手の活躍で大変盛り上がっているパリオリンピックですが、選手からはSNSで気になる投稿が相次いでいます」
競歩・柳井綾音選手の投稿
「批判は選手を傷つけます。このようなことが少しでも減って欲しいと願っています」
柔道・銅メダルの永山竜樹選手の投稿
「お互い必死に戦った結果なので、ガルリゴス選手へのひぼう中傷などは控えていただきたい」
藤井キャスター
「このようなメッセージが投稿されていますが、なぜ、選手たちが相次いでこんなコメントをしているのでしょうか」
「実は、柳井選手は当初、女子20キロ競歩と混合競歩リレーにエントリーしていたのですが、その後、20キロ競歩への出場を辞退すると発表しました」
「これは、日本チームとしてより高い順位を見込めるリレーに専念しようと話し合い、陸上競技連盟が判断したことなんですが、柳井選手のわがままであるかのような間違った解釈で、批判するコメントが相次いだんです」
「また、柔道の永山選手の試合では、審判のジャッジをめぐり物議を醸していて、対戦相手の選手にもひぼう中傷のコメントが殺到しました」
藤井キャスター
「こんなことを選手に言わせてしまって残念だなと思いますが、度を超えたひぼう中傷が後を絶たないんですね」
清水希容さん(空手家・五輪銀メダリスト・『news zero』木曜パートナー)
「当事者が一番わかっていると思いますので、 そっとしてあげてほしいと思います。コメントで深く傷ついて立ち直れていない選手も見たことがありますし、ひぼう中傷は選手だけではなく、家族やその周りの人たちにも影響が及ぶことを、想像してほしいと思います」
「この場に立っている方たち、選手も含め審判やスタッフの方たち皆さんは、努力をして立ってきているので、あらためて敬意を持ってほしいと思います」
藤井キャスター
「選手はもちろん、選手の周りの皆さんを守るという対策も必要ですね」
小栗解説委員長
「実はIOC(=国際オリンピック委員会)は、こうしたひぼう中傷に対して、今回のパリオリンピックから初めて、AIを使ったSNSの監視システムを導入しているんです」
「主要なSNSを35以上の言語でリアルタイムで確認し、ひぼう中傷が疑われる言葉や画像、絵文字を識別し、悪質な投稿を運営事業者に通知して削除を求めるということです」
藤井キャスター
「気軽にコメントできるからこそ、コメントするときに私たちが気をつけなければならないことは、どんなことでしょうか」
小栗解説委員長
「ソーシャルメディアに詳しい国際大学の山口真一准教授によると『正当な批判』と『ひぼう中傷』には、やはり線引きがあります。例えば『このプレーは良くなかった』など、試合内容やパフォーマンスを評価することは『批判』ですが、選手自身を攻撃すること、これは『ひぼう中傷』にあたります」
「例えば『下手だから辞めろ』など侮辱的な言葉を投げかけたり、『性格が最低だ』など人格を否定すること、『ウソの情報』にもとづく悪口などがひぼう中傷で、いかなる理由があろうと、やってはいけない」
「選手の心や命に関わりますし、書き込んだ人が民事、刑事の責任に問われるケースもあるといいます」
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藤井キャスター
「今回の五輪では特にSNSでのひぼう中傷が取り沙汰されていますが、私たちは自分の気持ちを整えきれない時に、むき出しの言葉を投げつける傾向があります」
「自分の不快感を誰かに押し付けていないか、SNSに投稿する前に立ち止まりたいものです。投稿された意見が正当な批判ならば、そこには必ず提案や生産性が伴います」
「人生をかけて努力してきた人に、指先だけで作った言葉のポイ捨てを、すべきではありません」
(8月1日放送『news zero』より)