被災した地元をチアで盛り上げたい「Let's cheer up ふたば!!」【ちゃれんじ探究クラブ】
――生徒自らが課題を設定し、情報を集め、分析して主体的な学びの姿勢を育むいわゆる探究学習が全国の高校で本格的に導入されています。このコーナーでは、その探究学習に取り組む高校生にお話を伺います。
福島県立ふたば未来学園高等学校を卒業した和賀菜々香です。よろしくお願いします。
■取り組みのきっかけは?
私はもともと福島県双葉郡の富岡町出身なんですが、宮城県の避難した先で小学校2年生からチアダンスを習い始めて元気づけられたという経験がありました。自分自身も誰かを元気にしたいと思って、ずっと中学校3年生までチアダンスをやっていました。
――その活動を続けていく中で、心境の変化とかはあった?
小学生の頃は、ただ自分自身が踊るのが楽しくて、チアを通してお客さんが笑顔になってくれるのがうれしいという感じでした。その後、被災地やいろんな場所を訪問してパフォーマンスをする中で、地元のために頑張っている方々の姿を近くで見ることができました。自分自身が今できるチアを使って、地元の福島県双葉郡のために何かできないかと、プロジェクトを立ち上げる方向に進んでいきました。
■福島に戻って活動。大変だったことは?
――避難先でチアに出会い、また福島の双葉に戻りました。高校でもチアの活動を続けましたが、どんなところが大変でしたか。
私たちの代は高校入学と共にコロナ禍という状況で、思うようにいかないことばかりでした。先生方のサポートや、NPOの方のサポートなどを受けて活動していけるようにするのは、すごく大変だったと思います。
――確かに。そういう中で具体的にどうやってこのプロジェクトを進めていきましたか。
地元の方にお話を伺う機会を設けていただいて、実際に地元のイベントにチアダンスのパフォーマンスをするという形で呼んでいただいたり、小さなところから地元の方と一緒に活動の場所を広げていったという感じですね。
――その地元の方との交流から何か感じましたか。
最初の頃は「本当にチアダンスを受け入れてもらえるのか」という不安がありましたし、「チアを通して本当に元気が届けられるのか」という不安がありました。でも実際にパフォーマンスをしてみると、地元の方から元気をもらうことも。だからこそ自分たちも元気を届けたいという気持ちがすごく高まりました。
■活動を通してうれしかったこととは?
――特に嬉しかったことはどんなことですか。
子どもたち向けに1か月ほどのワークショップを開催した時がありました。(子どもたちは)最初はみんな緊張していて、(多くの子供は)なかなか前に出てきてくれなかったんですけど、徐々にみんなの笑顔が増えていって、最後にパフォーマンスする時には、みんなが笑顔になりました。パフォーマンスが終わった後に「まだまだ踊っていたい」との声を、子どもたちが私たちにかけてくれて嬉しかったです。
――その子どもたちというのは、福島の地域に住む子どもたちですか。
そうですね、広野、楢葉、富岡の3つの町の小学生の子どもたちを集めて、実際にその子どもたちと一緒に「地元の何か特産品や、有名なものって何だろう」と考えてダンスとして表現できないか試みました。
■子どもたちとダンスの振り付けづくり
――「チアの中に地域への愛が育まれる踊りを入れる」すごくスケールの大きなダンスだと思ったんですけど、どんなダンスが出来上がったんですか。
例えば富岡町は桜並木や桜が有名なんですけど、「桜」という単語から自分の体ってどうやったら表現できるんだろうと考えた時に、子どもたちから桜が散るような動きが出てきたりとか。
広野町は「バナナ」が有名なんですけど、バナナの皮をむいた振りを入れたり。そういった子供たちだからこそ出てくる柔軟な発想からのダンスの表現はすごく広がったのかなと思います。
――面白いですね。大人ではちょっと発想できないものですね。
■いま感じるチアの可能性とは
――チアの可能性や面白さでは、どんなことを感じましたか。
すごく「人と人とのつながりを生むような力」がチアダンスにはあるのかなと、探究学習を通して感じました。いろんな人との分断が生まれてしまっている中で「架け橋としてのチア」というものを使って、人と人との心をつなげられるような活動をしていけないかということを考えるようになりました。
――この活動の中ではどんな成果を発表できたんですか。
最後は、福島県の地元のJリーグチームである「いわきFC」の試合の前、実際に試合が行われるグラウンドでチアを披露する機会を設けていただきました。スポーツの応援という形でありながら、地元双葉郡を応援するという活動を、子供たちと一緒にできたということは、すごく意味があることだったのではないかと思います。
■活動を今後どう生かしたい?
将来的には双葉郡でチアスクールを運営したいと考えています。地元の方と一緒に協同しながら、子供たちの笑顔を引き出せるような場を作っていきたいなと思っています。
――素晴らしい夢ですね。本当に和賀さんの笑顔が、子供たちそして福島のたくさんの人たちの笑顔につながるプロジェクトなんじゃないかなと感じました。これからも頑張ってください。
ありがとうございました。
聞き手 鈴江奈々(日本テレビアナウンサー)
取材協力 認定NPO法人 カタリバ
全国高校生マイプロジェクト実行委員会