“106万の壁”撤廃へ 5年に1度の年金改革案 きょうとりまとめへ
厚生労働省の年金部会は24日、5年に1度行われる年金制度改革の方向性を示した案をとりまとめます。パートの人などの「働き控え」につながっている「年収106万円の壁」を撤廃する方針が示される見通しです。
これまでの部会では、パートやアルバイトの人などが、自分が勤務する企業の厚生年金に加入する収入要件、いわゆる「106万円の壁」について、2026年10月をめどに撤廃する方向でおおむね意見が一致しています。
現在、パートの人などが社員と同じ厚生年金に加入する要件は3つあり、収入のほかに、企業の規模や労働時間があります。このうち企業規模についても、現在は51人以上となっていますが、段階的に撤廃する方針が示される見込みで、将来的には、要件は労働時間のみとなり、学生以外のパートやアルバイトで、週に20時間以上働く人全員が企業の厚生年金に加入することで議論がまとまる見込みです。
一方、保険料を負担することで、手取りが減るのを避けるため、企業によっては、月収13万円未満の人について、企業側が保険料を多く負担し、個人の負担を減らすことを可能にする特例制度を設ける案も示されましたが、部会では、中小企業には負担が重い、導入する企業とできない企業で差が出てしまうなどの反対意見があり、この制度を導入するかどうかは確定しておらず、今後さらに調整することになるということです。
年金部会が議論した、もう一つの大きなテーマは、国民全体が受け取る基礎年金が将来的に低い状態が続く問題をどうするか?です。
日本の年金制度には、現役世代の保険料負担を抑えるため、高齢者らに支給する年金額の伸びを、物価や賃金の伸び率に比べて低く抑える仕組みが導入されています。この「年金の伸びを抑える」期間が長くなって、特に基礎年金の額が低くなることが大きな課題となっていて、年金部会は、これを改善する方策の検討を行いました。
部会では、会社員が過去に納めた厚生年金の保険料の「積立金」の一部を使って、会社員や自営業など国民全員が受け取る基礎年金の額を底上げする案が示されました。
仮にこの改革を行うと、現在、年金を受け取っている元会社員の年金額は一時的に少し低くなりますが、今の40代やそれより若い年代では、ほとんどの人で将来受け取る年金額が3割ほど増えるという試算が部会で示されています。
ただ、基礎年金の半分は、国の税金でまかなわれるため、基礎年金の底上げをするには、巨額の財源が必要となる見込みで、それをどう確保するのか、懸念する声もあがっています。
年金部会による改革案は24日、とりまとめられる予定で、厚労省は、この内容を基に、年金改正の法案を作り、来年の通常国会に提出して、成立させることを目指します。