【記録的猛暑】平年より「4℃高」も…気象庁の検討会「異常気象」 偏西風の蛇行が影響
今年の夏は本当に暑いです。「最近涼しくなった?」と錯覚してしまうほど、7月までがとても暑かったのですが、6月下旬からの記録的な暑さについて、気象庁の検討会は「異常気象だ」との見解を示しました。
・平年と比べて“4℃高”
・海外でも“非常事態”
・紅葉・花見に影響も
以上の3つのポイントを中心に、詳しく解説します。
22日、気象庁で開かれた異常気象分析検討会の会見で、中村会長は今年の暑さについて言及しました。
気象庁 異常気象分析検討会 中村尚会長
「40℃を超えるような状況が続いていますので、異常気象ととらえてもいいかもしれない。少なくとも気温で見る限り、6月下旬に、真夏に近いような状況になっていた」
6月下旬から7月はじめにかけて、専門家も「異常気象」と表現する記録的な暑さとなりましたが、この時期に群馬県の伊勢崎市では、最高気温40℃以上が6月25日、29日、7月1日と3日間も観測されました。東京都心でも、6月25日から9日連続で猛暑日が観測され、統計開始以降で最長の連続記録となりました。
この記録的な暑さは、関東だけではなく、東日本から西日本の各地で観測されていて、今年の6月下旬の平均気温は平年と比べて、東日本で「+4.0℃」、西日本で「+3.2℃」と統計開始以降最も高くなりました。
この異常な暑さの原因は何なのでしょうか。
そもそも猛暑には、「太平洋高気圧」と「偏西風」が関係しています。
今年は、偏西風が北寄りに蛇行。そこに生じたスペースに太平洋高気圧が強く張り出したほか、この高気圧の上に、さらにもう一つ、別の高気圧が重なりました。そのため、高気圧が「2階建て」となって暖かい空気が日本付近に流れ込み、猛暑になったと気象庁の検討会は分析しています。加えて、長期的な地球温暖化も背景にあるということです。
偏西風は西から流れてきますので、日本よりも西側、北大西洋からヨーロッパ上空でも、今年は平年以上に大きく蛇行していて、影響が出ました。
■海外では山火事 猛暑の影響で
猛暑の影響で、スペインやギリシャなどヨーロッパの各地では山火事が相次いでいます。
また、ドイツでは猛暑により、重要な水路となっているライン川の水位が下がり、物流にも影響が出ています。ロイター通信によると、主要拠点・カウプ付近の今月15日の水位は31cmでした。これでは貨物を満杯に積んで安全に航行することはできないといい、普段の4分の1ほどに貨物を減らしている船もあるということです。
偏西風が蛇行した理由については、まだわかっていないことも多いですが、気象庁の担当者は「背景に地球全体の温暖化がある」としています。
「温暖化」と聞くとスケールの大きいテーマすぎて、自分から遠い問題として聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。
北海道大学大学院地球環境科学研究院の藤井賢彦准教授によると、去年、北海道の小樽沿岸を対象に行ったシミュレーションでは、温暖化による海水温の上昇などが続くと、エゾバフンウニやホタテ貝が今世紀末には大幅に減ってしまうといいます。
ほかにも、気候変動によっていくらやエビ、カニ、貝類も減っていく可能性があるということです。
ただ、これは対策をしなかった場合のことで、再生可能エネルギーを使うなど二酸化炭素を減らす努力が必要だということです。
また、気になるのが、今後の気温についてです。
23日に気象庁が発表した3か月予報によると、全国的に9月と10月は気温が平年より高い見込みで、特に9月は気温が高く残暑が厳しくなる可能性があるため、引き続き、熱中症に警戒が必要だということです。11月の気温はほぼ平年並みと予想されています。
気象予報士の伊藤宏幸さんによると、このように秋も気温が高めの傾向になった場合、今年は紅葉のスタートが平年より遅くなる可能性があるとしています。
そして、近年の気温の上昇傾向が続くと、春の楽しみの1つでもある桜にもこの先、満開にならないなどの影響が出る可能性があるということです。
しかし、気温の上昇傾向で、真冬に気温が下がりきらないと桜が上手に目覚められず、いわば“寝ぼけたような”状態になってしまうそうです。
温暖化がさらに進む数十年後には、桜の花がなかなか咲かなかったり、きれいに満開しにくくなったりする可能性もあるということです。
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このまま気温の上昇傾向が続くと「暑すぎる」というだけでなく、将来、私たちの生活にも大きな影響が出てくるかもしれません。影響について、まだまだ解明や予測できていないことも多いですが、気象情報に関心を持って、今後の変化に対応できるようにしていきたいものです。
(2022年8月23日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)