東京五輪 競技の進行を左右する「気象」
来年に延期された東京オリンピック・パラリンピック。前例のない延期決定に今後はギモンだらけ。大会運営を取り仕切る大会組織委員会のキーマンに話を聞くシリーズ企画。競技の進行を左右する「気象」について、気象情報担当の西潟政宣さんに聞いた。
■選手・観客を守る「気象情報センター」
スポーツ大会の成功に一役かうのが、天気の予測だ。東京大会は、夏真っ盛りの7月下旬に開幕し、最高気温35℃を超える日も多々ある。大会組織委員会は期間中、「気象情報センター」を設置する。
「スポーツは必ず天気の影響を受けるものが多くて、とくに屋外競技ですね。サッカーであれば雨が降っても競技を続ける場合もありますけれども、テニスであれば雨が降ったら即中断とか。それぞれスポーツごとに天気の影響は大きく違うんですけれども、その違いに応じて気象の情報を提供する。今どうなっているのか今後どうなるのかということについて、情報提供するのが私の仕事になります」
43会場すべての天候や気温、風速などの予報を1時間ごとに出すという。気象予報士をいくつかの会場に送り込み、70人ほどで大会を支える。
■スポーツの公平性のために
これまで重ねたテスト大会で細かな気象予測が、競技の公平性を保つために重要な役割を果たすことに気づかされた。
「ボートのテスト大会があったんですね。海の上をこぐものですから風の影響を受けやすいということで、午後から風が強そうだというのが前の日からわかっていたのでそれを伝えたところ、競技責任者のほうで明日のスタートを30分早くしようと、そうでないと午後には風が強くなってきてしまい公平な競技ができなくなる。当日午前中は風がよかったんですが、午後になると風が強くなってきたので早く判断してよかったねと感謝された。本番でも同じような情報提供ができればいいなと思っています」
気象のデータを見るだけでなく実際に会場に赴き、「思いの外、風が強い」など現場の傾向を調査し、さらなる予報の精度をあげると意気込んでいる。
■コロナ禍の重責…暑さとマスク
猛暑が続く日本の夏だが、新型コロナウイルスの感染拡大でマスクの着用が余儀なくされる中、大会を迎えることになる。
「暑さ対策の中ではマスクをするのはぶつかりあうものだと思いますので、今まで以上に暑さの情報をより正確に提供すると。情報提供する重たさが増したんじゃないかと思っています」
「台風や雷を止めることはできないが、それによって困る量を減らすことが役割だと思いますのでしっかりと大会を楽しんでいただけるように情報提供していきたい」