記者が見た「結婚を認める」秋篠宮さま会見
天皇皇后両陛下をはじめとする皇室ご一家の会見や動静、宮中行事などを取材する宮内庁担当記者。日々のニュース映像とは別の角度から見た取材のこぼれ話を宮内庁キャップがつづります。
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宮内庁キャップの取材日記
~笛吹雅子の現場こぼれ話
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■「結婚を認めるということです」
コラム3回目、笛吹雅子です。
秋篠宮さまの誕生日会見について、書こうと思います。
11月20日金曜日、午前10時。秋篠宮さま55歳の誕生日を前にした記者会見が、赤坂東邸で始まりました。秋篠宮家に隣接した、面会など公式の行事で使う部屋です。2017年9月、眞子さまと小室圭さんの婚約内定会見もこの部屋で行われました。その時と違うのは、新型コロナウイルス対策のため、開け放された窓。時折、鳥の声や外を走る車の音も聞こえます。側近たちの静かに張り詰めた空気も違います。いつも率直に思いを語り、時に問題提起される秋篠宮さまからどんな言葉が飛び出すだろうかと、私は秋篠宮さまの目をみながら聞いていました。
「結婚を認めるということです」。長女の眞子さまの結婚についての質問に、秋篠宮さまは、ほぼ第一声で答えられました。予想外にストレートな言葉だったことに、私ははっとし、身を乗り出しました。「憲法にも結婚は両性の合意のみに基づいてというのがあります」「感じとしては決して多くの人が納得し喜んでいる状況ではない」「今までの経緯も含めてきちんと話すことは、大事」。次第に小室さんの対応に納得されていないことが伝わってきました。淡々と語られる表情、言葉からは、秋篠宮さまの「感情」そのものは伝わってきません。感情を押しとどめているかのようでした。
その会見の最後に出たのが、「結婚と婚約は違いますから」という発言です。一瞬真意が分からなかった私は、「婚約の延長線が結婚ではなかったのか、違うとはどういうことなのか」ととまどい、あれこれぐるぐると考えをめぐらせました。その後、秋篠宮さまの発言を順にたどり、側近幹部にも聞き、私なりに腑(ふ)に落ちてきました。
違いは、憲法にあるかないか。考えてみれば、秋篠宮さまは「多くの人に納得し喜んでもらえる状況にならなければ、私たちは婚約の儀式にあたる納采(のうさい)の儀は行えない」と述べられたことがあります。しかし、結婚そのものについては触れられていません。憲法にある以上、二人の意思を尊重すべきという思いはずっと心にあり、結婚への言及を控えられてきたのでしょう。眞子さまもそこを理解しているからこそ、秋篠宮さまの会見の前に、結婚に向けた強い「お二人のお気持ち」を公表されたのだと思いました。「結婚と婚約は違う」。婚約は両家の結びつきでもあります。秋篠宮さまは、やっぱり皆にも分かってもらいたいという本音を、会見の最後の最後に漏らされたのだろうと思いました。
■淡々とした話しぶりに感じた「父としての苦悩」
会見の進め方について補足します。秋篠宮さまの誕生日会見で、記者会からの質問は5問です。質問は事前に提出してあります。代替わり前は、紀子さまとお二人で誕生日会見に臨まれていましたが、皇嗣となってからは、秋篠宮さまお一人になりました。撮影が許されるのは、3問目までです。
会見では、予定していた質問が終わった後で、関連質問が受け付けられます。この日も進行役の側近幹部から「時間が超過しているので、関連質問は1つだけ」のアナウンスがありました。数人が手をあげ、秋篠宮さまは手をあげた記者皆へ質問を促されました。その3人が質問して、もう会見が終わりという時に、記者が改めてお二人を尊重される気持ちを確認したところ、秋篠宮さまは「特に結婚と婚約は違いますから」と述べ、考え考え、「結婚については本当にしっかりした確固たる意思があれば、それを尊重するべき」と話されました。そして、間を取りながら、自らも納得させるように言葉を続け、「両性の合意のみに基づくということがある以上、そうでない…ないというふうには…私は…やはり出来ないです」と会見を締めくくられました。この部分の映像を見れば、皆さんにもそれぞれ感じるところがあったのではないかと、撮影がなかったことを残念に思っています。
秋篠宮さまはこれまでの会見でも、関連質問でもうひとつ念押しして聞かれた時に、少し踏み込んで述べられるということがありました。おととしの「大嘗祭(だいじょうさい)」は身の丈にあった儀式に」と話された時もそうだったと思っています。
秋篠宮さまは会見で「小室さん」という名前を口にされません。「人の家(うち)のことはよく分からないけれども」という表現をし、対応するのはあくまで小室さん側であり、秋篠宮家ではないというこれまでのスタンスと変わりがないことも強調されました。憲法に保障された結婚の自由と、その憲法に「国民の総意に基づく」と規定される天皇のご一家としての責任。ヨーロッパ王室のような財産を持たずに存続している日本の皇室、だからこそ国民からの理解が大切である現状…。それらの折り合いをどうつけていくのでしょうか。秋篠宮さまの会見は、淡々と話されているが故に、余計に父としての苦悩が感じられるものでした。
■ご結婚への道筋は見通せず
宮内庁は、意見のメールや電話の件数、内容を聞きましたが、明らかにしませんでした。
眞子さまのご結婚に向けた話は、一人の女性の幸せ、親子の関わりを考えさせられるとともに、皇室制度への国民感情に影響を与えることになりました。お二人の意思が固ければ「結婚は認める」と、秋篠宮さまははっきりと示されました。しかし、小室さんのロースクール卒業は来春の予定で、ご結婚がいつどのような形になるか、婚約の儀式が本当に行えるか、道筋は見えません。今後の予定や見通しについて、秋篠宮さまは「追って考えていくことになる」と話されました。宮内庁幹部は「まだ全く分かりません」としつつ、「殿下は、眞子さまの幸せを一番に願っておられると思います」と話し、良い形で収まることを願っていました。
秋篠宮さまが記者会見にのぞまれるのは、誕生日の前と外国訪問の前です。新型コロナウイルスの状況で外国訪問がままならない今、次の会見で直接お考えを伺えるのは先のことになりそうです。
(冒頭の動画は2020年11月30日放送)