子どものコロナワクチン接種を専門家に聞く

3月に入り、新型コロナウイルスワクチンの5歳から11歳の子どもへ接種が本格的に始まった。打つかどうかの判断のため、知っておきたい有効性や副反応などについて、小児科医でワクチンにも詳しい長崎大学の森内浩幸教授に聞いた。
■基礎疾患のある子が最優先
――接種を判断する際の基準となるのは?
今のワクチンに期待されているのはあくまで重症化を防ぐということ。まず、重症化リスクのある基礎疾患のある子ども達には強く推奨することになります。
基礎疾患といっても色々とあって、例えばぜんそくは一番よくある基礎疾患の一つですが、薬を使ってコントロールできている子はそれほど心配がいらない。だけど、発作を繰り返して入院が珍しくないお子さんだとワクチンで重症化を防ぐことを考えた方がいいと思います。
――基礎疾患のない子どもの場合は
まずは養育者、お父さんやお母さんがその子に対するワクチンをどうするかを十分話し合って決める。そのために必要な情報は、かかりつけの先生とよく相談してほしい。
健康な子で特別、重症化のリスクがなくても、例えば家庭の中におじいちゃん、おばあちゃんがおられるとか、基礎疾患のある大人、例えばお父さんががんで治療を受けていて家庭にできるだけウイルスを持ち込みたくないという場合、大事な家族を守るために、もしこの子が学校でかかって、家に持ち込んでお父さんにかかってしまって重症化して、場合によっては命まで落としてしまった時、「できることはまだあったのに」と悔やむかもしれないし、もしかしたら「自分がお父さんにうつしたためにお父さん死んじゃったんだ」と一生トラウマが残るかもしれない。
そういう理由とかで、ぜひ急いで打ちたいということであれば、その気持ちに応える義務も私たちにはあると思います。一概にその子の重症化のリスクということだけでは計れない。
■子ども本人には“うそ”のない説明を
――子どもへの説明は
今回のワクチンは、細い針を使うので打つ時の痛みはそんなにないですが、翌日になると一定数の子どもは痛みが出ます。だから「痛くないよ」というのは言わない。
打つメリットに関しても、例えば「打ったらマスクしなくてよくなるよ」とか「修学旅行も間違いなく行けるようになるよ」とか、約束できるか分からないことなので言わない。
――小さい子に説明も難しいと思うが
例えばファイザー社のリーフレットでも子ども用の説明のものもあります。子どもにある程度分かる説明をしておくことは必要だと思います。
5、6歳であれば、小学校への入学前に、日本脳炎やジフテリア破傷風のワクチンも打ちますが、じゃあその時にそんなに構えて説明したかというとそうでもないですよね。
だから新型コロナのワクチンだけ、えらく構えるというのも変な話ですが、逆に言うと、新型コロナ以外のワクチンの時にも、子どもの年齢や発達段階に応じて、無理矢理ということではなく、嫌々ではあっても、それがどうして大事なのか説明するような習慣付けはあった方がいいのかなと思います。