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子どものコロナワクチン接種を専門家に聞く

2022年3月8日 15:10
子どものコロナワクチン接種を専門家に聞く
子どもへの接種後の副反応/厚労省HPより

3月に入り、新型コロナウイルスワクチンの5歳から11歳の子どもへ接種が本格的に始まった。打つかどうかの判断のため、知っておきたい有効性や副反応などについて、小児科医でワクチンにも詳しい長崎大学の森内浩幸教授に聞いた。

■基礎疾患のある子が最優先

――接種を判断する際の基準となるのは?

 今のワクチンに期待されているのはあくまで重症化を防ぐということ。まず、重症化リスクのある基礎疾患のある子ども達には強く推奨することになります。

基礎疾患といっても色々とあって、例えばぜんそくは一番よくある基礎疾患の一つですが、薬を使ってコントロールできている子はそれほど心配がいらない。だけど、発作を繰り返して入院が珍しくないお子さんだとワクチンで重症化を防ぐことを考えた方がいいと思います。


――基礎疾患のない子どもの場合は

 まずは養育者、お父さんやお母さんがその子に対するワクチンをどうするかを十分話し合って決める。そのために必要な情報は、かかりつけの先生とよく相談してほしい。

健康な子で特別、重症化のリスクがなくても、例えば家庭の中におじいちゃん、おばあちゃんがおられるとか、基礎疾患のある大人、例えばお父さんががんで治療を受けていて家庭にできるだけウイルスを持ち込みたくないという場合、大事な家族を守るために、もしこの子が学校でかかって、家に持ち込んでお父さんにかかってしまって重症化して、場合によっては命まで落としてしまった時、「できることはまだあったのに」と悔やむかもしれないし、もしかしたら「自分がお父さんにうつしたためにお父さん死んじゃったんだ」と一生トラウマが残るかもしれない。

そういう理由とかで、ぜひ急いで打ちたいということであれば、その気持ちに応える義務も私たちにはあると思います。一概にその子の重症化のリスクということだけでは計れない。

■子ども本人には“うそ”のない説明を

――子どもへの説明は

 今回のワクチンは、細い針を使うので打つ時の痛みはそんなにないですが、翌日になると一定数の子どもは痛みが出ます。だから「痛くないよ」というのは言わない。

打つメリットに関しても、例えば「打ったらマスクしなくてよくなるよ」とか「修学旅行も間違いなく行けるようになるよ」とか、約束できるか分からないことなので言わない。


――小さい子に説明も難しいと思うが

 例えばファイザー社のリーフレットでも子ども用の説明のものもあります。子どもにある程度分かる説明をしておくことは必要だと思います。

5、6歳であれば、小学校への入学前に、日本脳炎やジフテリア破傷風のワクチンも打ちますが、じゃあその時にそんなに構えて説明したかというとそうでもないですよね。

だから新型コロナのワクチンだけ、えらく構えるというのも変な話ですが、逆に言うと、新型コロナ以外のワクチンの時にも、子どもの年齢や発達段階に応じて、無理矢理ということではなく、嫌々ではあっても、それがどうして大事なのか説明するような習慣付けはあった方がいいのかなと思います。

■副反応:年齢で大きな差はなし

――気になる副反応。年齢による差などは

 副反応の出方は、同じワクチンの量を打つ5歳と11歳では、5歳の方が若干出る傾向がありますけど、それほど明確な大きな差ではないようです。

・子どもの接種後の副反応
(厚労省リーフレットより)
接種した5~11歳のうち
50%以上 接種部位の痛み、疲れた感じ
10~50% 頭痛、筋肉痛、悪寒など
1~10% 発熱、下痢、嘔吐など

■有効性は早めに効果薄れる傾向も

――海外データで「抗体価が下がるのが早い」というのもあるが有効性は

 アメリカ疾病対策センター(CDC)で出している論文では、5歳から11歳と12歳以上にわけ、さらに性別、人種、基礎疾患の有無などを踏まえて比較しています。そういう中での比較で、確かに12歳以上に比べると少し効果は早めに落ちる傾向はあります。

 5歳から11歳へのワクチンは副反応も軽くなったかわりに、早めに効果が薄れてくる傾向はありますが、今のところまだどの程度なのかは完全に答えは出ていません。

■母子手帳は忘れずに

――打つ場合に気を付けるべきことは

 10歳11歳くらいになってくると(接種後)血管迷走神経反射とかが起こることがあるんですね。ホラー映画とかお化け屋敷で失神するみたいな感じで、脳の血液が少なくなって立ちくらみのような症状でパタッと倒れたりする。ワクチンに対する不安、恐怖が強いと起こりやすいんですよ。

その意味でも、あまり無理矢理、圧力をかけるみたいな形での接種はよくない。いろんな意味合いで、より丁寧な対応が求められる年齢層だとは思います。


――接種会場に持参すべきものは

 まず会場に絶対に忘れてはいけないものは、接種券と母子手帳。母子手帳でその子の健康状況もですし、最近2週間以内に別のワクチンを接種してないか、それも必ずチェックします。

5、6歳であれば、小学校に入る前のタイミングで、はしかと風疹の混合ワクチンとか、おたふくワクチンとかの時期になりますし、小学校に入った子でも、ジフテリア破傷風二種混合ワクチンとか日本脳炎のワクチンとかもあります。だから必ず母子手帳を持ってきてほしい。

あとは、子どもの気が紛れる暇つぶしになるようなもの、好きなおもちゃとか絵本とか、タブレットでもどんなものでもいいですが、それも持参してほしいと思います。

緊張していたらアルコール綿で拭いただけで「痛い」と言うんですが、気をそらしていたら気づかないこともある。子どもの負担を減らすためにも持ってきてほしいと思います。


――解熱剤は

 大人が使っているような解熱鎮痛剤をそのまま使うのは、たとえ体格の大きい子であってもできるだけやめてほしいと思います。普段からかかりつけの先生に熱が出たときに頓服でもらっているような、解熱鎮痛剤があったらそれを備えておいてください。

■接種めぐっていじめや差別がないように

――ほかに注意点は

 いろんな理由、いろんな気持ちがあってワクチンを接種しなかった子どもが、間違ってもいじめとか差別の対象になったりすることがないように周りは十分に配慮しないといけない。

ワクチンを打っても打たなくてもマスクを着用し、手洗いや換気に努めてということは変わらずに大事だと思います。


■森内浩幸医師
日本小児感染症学会理事長長崎大学医学部小児科学教授