がん治療後も美しく…後遺症きっかけに起業
がんの治療後にあらわれるある症状に多くの患者が悩まされています。後遺症を抱えながらも、がん治療後の人生を、美しく楽しみたいと立ち上がった女性がいます。
水田悠子さん(37)「むくみはむくみでも、普通のむくみと違って、3センチも4センチも(足が)太くなっちゃって。(太さが)違ってそのまま。本当、受け入れ難かったですね」
29歳の時に子宮がんを発症し、子宮を摘出した水田悠子さん。その後8年間、足のむくみという後遺症を抱えています。
むくみの原因は、リンパ浮腫(ふしゅ)という病気。がんの治療で足の付け根にあるリンパ節を切除したことで、リンパ液がたまりやすくなり、足などがむくんだ状態になるのです。むくみを防ぐため医療用の弾性ストッキングを一日中はき続ける必要があると言います。
ただ従来品は、効果は高いもののかなりぶ厚く、海外ブランドのものが多いため、色やサイズが合いにくく、値段も高いのが現状です。
がん治療の前から、化粧品会社で商品開発などをしていた水田さん。手術から5年が経過した頃、水田さんは今後の人生についてこう考えました。
子宮がんを経験・水田悠子さん(37)「(治療後)、鬱々(うつうつ)と暮らしていくには、あまりにもったいないから、その後の人生も(がんを)経験したなりに、心地よく楽しく過ごせることを目指したいなと」
がん経験者としての悩みをきっかけに、去年5月、会社を立ち上げ、医療用ストッキングの開発に挑戦しました。
むくみを防ぐ機能を維持しつつ、おしゃれなものにしたい!去年12月、ようやく完成しました。
水田さん「どういうふうに思っていただけるのか、ワクワクドキドキです」
水田さんの会社がWEBで販売を始めたのは、ストッキングとタイツの2種類。足がきれいに見えるように、色味と透明感にこだわり、前へ進んでほしいという意味で商品名は「MAEE(前へ)」としました。
水田さん「おなかの真ん中に手術の傷痕がある方もいるので、ストッキングの縫い目があたって不快みたいなことを感じることがあったので、縫い目をずらしてV字型のきりかえにしている」
がんの当事者だから分かる、ものづくりへのこだわりです。
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水田さん「第一印象いかがでしたか」
先月おこなった商品のモニター会議では、リンパ浮腫の患者の意見を聞きました。
リンパ浮腫患者「はき心地ですよね。それは既存のものに比べていいかな」「ほかの商品、今までの商品と比べて、はきやすさ脱ぎやすさに関しては、ほぼ同じかな」
“治療後の人生も楽しく”水田さんはがんサバイバーの願いを実現したいと考えています。
水田さん「命はすごい大事で、最優先と思うのは当然なんですけど、助かったからこそ、ケア(治療)かビューティー(美)か、二者択一でない新たな価値観を提案するとか、そういう軸で新しいことを巻き起こしていきたい」