“がんサバイバー夫婦”結婚5年目…子供を
いま、若い世代のがん患者が、将来、子供を授かるための取り組みが進んでいます。妊娠、出産に向けて動き出した“がんサバイバー”の夫婦を取材しました。
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病院に向かう岸田徹さん(33)と妻の枝李馨さん(34)。
徹さん「(病院で)子供をどうやって授かっていくかスケジュールを相談」
2人は、20代の頃にがんを経験したサバイバー。結婚5年目で、妊娠、出産を目指しています。
20代で全身に腫瘍ができる「胎児性がん」という希少がんなど2度、がんを患った徹さん。
徹さん「性機能に支障が出て精子が出ないだろうという状態になったので男性として生きている意味があるのかなと、当時すごく落ち込みました」
そんな中、徹さんは抗がん剤の治療前に、医師からあることを提案されたといいます。
徹さん「将来、治療で子供をもつ能力が低下する可能性があるから『精子を保存しておく?』と言われた」
医師から勧められたのは「精子の凍結保存」。
がん患者は、手術や抗がん剤などの副作用で、生殖機能が低下したり、失われたりする場合があります。そのため、若い世代のがん患者は、将来、子供を授かる機能を維持するために、治療前にあらかじめ、卵子や精子などを凍結保存することができます。
ただ、治療や身体の状態は個人差があるため、全てのがん患者が保存できるとは限りません。
精子保存を選択した徹さん。その後、同じがんサバイバーの枝李馨さんと出会い、結婚。20代で「皮膚がん」を患った枝李馨さんも不安を抱えていたといいます。
枝李馨さん「(当時)がんになった人と将来、結婚したい男性が現れるのかって絶望した」
そして、今年2人は保存していた精子を使って妊娠、出産を目指すことを決断。
徹さん「これが精子保存の記録」
枝李馨さん「妊娠、出産する可能性を夫が残してくれたので感謝です」
ただ一方で、こんな問題も――
徹さん「20代前半の貯蓄額はたかが知れている。プラス(がんの)治療費がかかってくるのは本当に絶望しかないですよね」
さらに、精子を保存するためにかかる費用は、一般的に5万円程度。卵子は40万円程度かかるケースもあり、若い患者にとっては大きな負担となります。
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厚生労働省は1日に開かれた検討会で、今年4月から、卵子や精子などを凍結保存する費用を半額程度助成することを決めました。
聖マリアンナ医科大学・産婦人科学 鈴木直教授「経済的な負担で諦めてきた患者が『妊よう性温存(妊娠出産の希望残せる医療)』で治療を受けることになれば多少(保存する人の)数は増えると思う」
検討会の委員である鈴木教授は「がん治療の一環」だとして、患者に情報提供する体制の構築も重要だといいます。
徹さん「(がん患者の妊娠、出産は)これからの分野だと思うので(費用などが)整理されていくといいなと思います」
若い世代のがん――将来の選択ができる取り組みが期待されています。