選択的夫婦別姓 自民党内紛糾で大幅後退
結婚する際に、夫婦別姓か同姓かを選ぶことができる、選択的夫婦別姓制度。導入にむけた議論は、自民党内の反発で、大きく後退したかたちとなりました。
私たちが訪れたのは、都内に住む事実婚のカップル。ふたりには9歳の娘がいます。
事実婚を選択した妻「今年用です」
ふたりが取り出したのは、これから区役所に提出する、婚姻届と離婚届。
事実婚を選択した夫「年末にこちら(婚姻届)を出して、年始にこっち(離婚届)を出す」
今年の年末と、来年の年始で、4回目の結婚と離婚をするというふたり。事実婚では、税制上の優遇措置である、扶養控除がうけられないため、年末だけ一時的に法律婚にするといいます。
妻「法律婚していないと私の医療費を、こちらで控除することができない。そういうのを合わせると家計へのインパクトが年間10万円くらいには」
煩雑な作業を続けながら、事実婚にこだわる理由は。
妻「夫婦は対等な関係でいるという、そういう夫婦でありたいなと思ったときに、どちらかの氏にするというよりは、別氏のほうがいいなというか、私は変えたくないなと思った」
夫と妻が、それぞれ結婚前の姓を名乗る、「夫婦別姓」を続けるためです。
妻「私たちも同氏に反対ではなくて、本当に選びたいということなんですよね」
先月、早稲田大学の教授などがおこなった調査では、「選択的夫婦別姓制度」への賛成が、7割以上。自民党内でも。
賛成派 三宅伸吾議員「7割の国民は、選択的夫婦別姓を容認しているという事実を、自民党の国会議員は知るべきだ」
選択的夫婦別姓に、否定的だった安倍総理が辞任し、かつて、賛成を表明していた菅総理にかわったことで、議論が活発化したのです。
菅政権は「政府においても必要な対応を進める」と、これまでより踏み込んだ表現を、今後5年間の国の指針に盛り込む予定でした。
しかし、「結論ありきの恣意的な議論だ」として、自民党の一部の保守派が猛反発。その理由は。
反対派 山谷えり子議員「親子別姓で、また孫が違う名前、ひ孫が違う名前。そうすると、ちょっとよくわからなくなってしまう。家族の絆が大切でありますし」
子どもへの影響を、懸念する声や。
反対派 高市早苗議員「旧姓の通称使用は拡大していく、これが私たちの考え方です」
旧姓を、通称として使える環境を整えれば、問題は解決すると主張しています。
紛糾した議論の末に、自民党が、18日了承した案では、「選択的夫婦別氏(姓)制度」という言葉が、「夫婦の氏に関する具体的な制度」と、あいまいな表現に。さらに、反対派が求めていた「家族の一体感」などの記述が、新たに追加されるなど、当初の政府案から大幅に後退したのです。
こうした議論を、夫婦別姓を選んだ当事者は、どう受け止めたのでしょうか。
夫「正直私は別姓でやっているので、残念だなというのが正直な気持ち。他の国はいろんなかたちありますけど、夫婦同姓でないと 結婚できないのは日本だけ」
娘(9歳)「ママとかパパが、名前そのままがいいんだから、いいと思う。名前が違っても普通の家だし、仲良くやっているし」
選択できる権利を求める世論の高まり。今後、政治はどう向き合っていくのでしょうか。