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【解説】国と都、文化施設めぐり対応割れる

2021年5月11日 20:19
【解説】国と都、文化施設めぐり対応割れる

新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言が、12日から延長期間に入ります。そんな中、文化施設への休業要請をめぐって国と東京都で食い違いが起きました。

■“我慢のGW”に旅行・会食・BBQ…感染
 
11日、東京では新たに925人の新型コロナウイルスへの感染が確認されました。重症者は10日から3人増えて81人でした。“我慢のゴールデンウイーク”と言われていたなか、旅行や帰省で感染した事例も出てきています。また、感染者の中には家族でバーベキューをしたり、親族10人で会食をしたという人もいました。

■大型施設めぐり対応が割れた国と都
 
12日から緊急事態宣言の延長期間に入ります。そんな中、国と東京都で、美術館や博物館など文化施設の対応をめぐって食い違いがありました。

そもそも1000平方メートルを超える大型施設について、国は12日以降、「休業要請」から夜8時までの「時短営業要請」に緩和する方針ですが、これに対して東京都は、12日以降も「休業要請」を継続していて、対応が分かれた形となっていました。
政府の対処方針では、感染状況等を踏まえて、知事が要請を判断できるようになっているため、東京都は国と調整の上、「休業要請」を継続しているのです。

■“宣言”延長期間へ 文化施設めぐり食い違い
 
そんな中、国は、都内にある「国立科学博物館」「東京国立近代美術館」「国立新美術館」「国立映画アーカイブ」「東京国立博物館」の5つの国立の文化施設を12日から再開する方針でしたが、これに対し、都が休業要請を守るよう申し入れました。

小池都知事「国の法律に基づいてやっておりますことなので、ご協力をお願いしたいと思います」
 
東京都は10日、小池百合子知事の名前で、国立の文化施設を所管する文化庁長官に対し、「引き続き、人流を抑制し、感染を抑える対策を講じていくことが不可欠と考えている」として、5つの施設を「都の措置に基づき休業を継続するよう、改めて強く要請する」とした文書を送りました。

これを受けて、文化庁を所管する文部科学省の萩生田大臣が11日、早速この文書について会見で発言しました。

萩生田文科相「美術館や博物館というのは、ほとんどの方がお話をしませんので、感染リスクが低いということで、国としては明日予定通り再開を準備してきたのですけど、昨日の夜中になって知事名で正式に要請といいますか、お願いの文書が参りましたので、それを踏まえてきょう東京都とよく相談をして、どういうふうに線引きするのかというのを考えていきたいなと思っています」
 
萩生田大臣は「10日の夜まで正式に相談がなかった」と話していますが、東京都の文書には「(文化庁に対し)繰り返し説明及び休業の要請を行ってきた」とあり、食い違いもみられました。

しかし、感染拡大を抑えたい思いは国も都も同じだとして、政府は11日に都と協議し方向を決めるとしていましたが、11日午後、政府は、東京都の要請を受けて5つの施設の休業を継続することを決めました。

■「国立」と「都立」入り交じる上野周辺
 
今回の問題は、国と都の施設が非常に近いところにあるというのが特徴です。上野は、「国立」と「都立」の文化施設入り交じっています。上野動物園は都立のため休業、その横の東京都美術館も都立なので休業となります。一方、国立の東京国立博物館と国立科学博物館は12日から再開予定にしていました。しかし、そのそばの東京文化会館は都の施設なので、チケット販売は再開しますが、主催する公演は31日まで中止にしています。このように対応が異なる予定になっていましたが、11日、政府は東京都の要請を受けて、国立の施設の休業継続を決めました。
(*国立西洋美術館は施設整備のため来年春まで休館中)
(*上野の森美術館は私立で12日から関係者のみ入場可)

11日、上野周辺では、こんな声が聞かれました。

近所に住む人「テーマパークとかと比べたら(再開しても)そんなに感染者は増えないんじゃないかなとは思いますけど、大々的に再開というのも賛成という感じじゃない」

埼玉から通院のため都内へ来た人「半々ですかね。開いてほしいのと閉館のままと。ずっと閉館していると日本の文化がだんだん廃れちゃうんじゃないかな」

■国立の文化施設の担当者「複雑な心境」
 
ある国立の文化施設の担当者は、「開けるにしても、開けないにしても複雑な心境だ」と話しています。というのも、10日の夕方に「明日から再開する」とホームページに載せ、開館準備を進めていたそうで、楽しみにしてくれていた人たちに申し訳ないという思いがあります。その一方で、「再開してもバッシングが来そう」という心配もあるということです。

東京都の担当者はまた、「国立の施設が休業要請を守ってくれないと、民間の施設にも影響が出かねない」と危惧しています。



それぞれの施設が、決められた範囲内でベストを尽くそうと努力をしています。ただ、隣同士にある文化施設なのに国立か都立かで対応が分かれると、利用者としてはどう行動すべきか困惑してしまいます。今後もきちんと協議して、一致したメッセージを発信してほしいと思います。

(2021年5月11日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)