ラグビー選手42%超がメンタル不調経験
大坂なおみ選手の「うつ」症状の告白。トップアスリートのメンタルヘルス(心の健康)について、1つの実態調査があります。ジャパンラグビートップリーグの選手251人にメンタルヘルスについての実態調査を行った結果、2.4人に1人の割合でなんらかのメンタルヘルスの不調を経験していたのです。
調査は、国立精神・神経医療研究センターと日本ラグビーフットボール選手会が、ジャパンラグビートップリーグの選手に、2019年12月から去年1月にかけて実施。調査に参加したのはジャパンラグビートップリーグの選手251人。その結果、なんらかのメンタルヘルスの不調を経験した人が、2.4人に1人の割合でいたのです。
251人のうち、心理的ストレスを経験したのは、32.3%(81人)。うつ・不安障害の疑いを経験4.8%(12人)、重度のうつ・不安障害の疑いを経験5.2%(13人)。何らかのメンタルヘルスの不調や障害を経験した人は、あわせると42.2%に。
国立精神・神経医療研究センターの研究代表者・小塩靖崇氏によると、同様のテストを使って行われた調査結果として、海外アスリートは33.6%(2019年)、日本の一般成人は31.3%(2011年)というデータがあります。
数字だけ見ると、日本のラグビー選手の不調等の割合が高く見えますが、小塩氏は「調査時期が違ったり、一時点の調査のため、比較するのではなく、同じぐらいの割合がいることがわかった」と話しています。
また、メンタルヘルスの不調のある人とない人で比較した結果、不調のある人は、疲労、食欲の変化、お酒関係のトラブル、競技力の低下、睡眠の問題、経済的な変化、体重の変化、試合に出られない、引退後を考える、という傾向が。こうした傾向とメンタルヘルスの不調との因果関係はまだ不明だということです。
調査について、小塩氏は「アスリートのメンタルヘルス自体、日本ではほとんどわかってきていない。ケアのシステムを構築するためにも、実態をまずは把握をしなくてはならない」と話しています。
最後に、小塩氏に「ラグビーという種目の特異性はありますか?」と聞いたところ、「これは海外の調査の結果ですが」と前置きし、「ラグビーという競技はコンタクトスポーツだということに加え、強くなければならないという社会からの期待、選手自身も強くなくてはと、心の叫びをさらすことが苦手なようです」とのこと。
「誰もが弱さをさらけ出せて、弱さを受け入れられる社会へ」調査後、「よわいはつよいプロジェクト」が発足。日本ラグビーフットボール選手会が小塩氏ら専門家とともに、アスリートのメンタルヘルスケアの研究を進め、すべての人々のメンタルフィットネスの向上を目指すもので、元ラグビー日本代表主将・廣瀬俊朗さんや日本代表田村優さんらたくさんのトップアスリートも賛同しています。
画像提供:「よわいはつよいプロジェクト」