里親が抱える“不安”求められる支援の充実
いま虐待や経済的な理由などで、親の元で暮らすことができない子どもは、およそ4万5000人います。このうち里親に育てられる子どもは、わずか2割ほどです。こうした中、里親などが育てる子どもに何らかの障害があるケースが増えているといいます。
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里親として兄弟を育てる白熊さん夫婦。3歳の時に迎えられた正夫さん(仮名・21)は、大学4年生で、すでに成人しています。手足が細く、小柄な文也君(仮名・10)は現在、小学4年生。4歳から白熊さん夫婦の元で暮らしています。兄弟には血のつながりはありません。
里親・白熊繁一さん(64)「(迎えた当時は)虚弱でした」
里親・白熊治代さん(63)「か細いって感じ」
出生時の体重が、わずか500グラムあまりだった文也君。「自閉症スペクトラム」や、「注意欠陥多動性障害(=ADHD)」「弱視」などの障害があり、特別支援学級に通っています。
白熊治代さん(63)「自分たちがこの年齢で、こんな小さな子を受けるのは体力的にも(悩んだ)」
文也君を迎えた時、両親はともに60歳近く。悩んだ末、迎える決断をしました。
厚生労働省によりますと、実の親の元で暮らせない子どものうち、何らかの障害がある子どもが、およそ20年の間で3倍になっています。
増加の背景には、学習障害などが新たに障害として分類されたことがありますが、専門家は別の要因も指摘しています。
──なぜ増加しているのか?
里親制度に詳しい日本女子大学人間社会学部・林浩康教授「多くのお子さんというのは、被虐待的な体験を抱えていたり、あるいは実の親も妊娠中もリスクの高い妊娠状況だったということもあると思う」
林教授は、親元で暮らせない障害のある子どもを育てるには、里親だけではく学校や医療などの支えが必要だと話します。
複数の障害がある文也君。こだわりが強くやりたいことができない時、暴れることも。また障害の影響もあって、お菓子の袋をゴムで閉じたり、ひもを結んだりすることが苦手です。
将来、生活するのに困らないよう文也君は、月に一度、作業療法士による訓練に通っています。ここでは、手先の訓練をしたり、体幹を養うためのトレーニングをします。
障害のある文也君と兄弟として暮らしてきた正夫さん。一緒に生活してきたことで、同じような子どもを支援したいと思うようになり、いま、作業療法士を目指しています。
文也君の兄・正夫さん「発達障害は障害だけど、それもひとつの個性だと思っていて。将来的には児童福祉の面で活躍できる作業療法士になれたら一番いいかな」
里親として文也君をいつまで育てるかは、児童相談所などが判断するため、白熊さん夫婦だけでは決められません。そんな中、不安があるといいます。
白熊治代さん(63)「里親の最終目的は自立させること。自立させるためには今のままで大丈夫かと、どういうふうに成長していくか不安になります」
障害がある子どもが増加する中、支援の充実が求められています。