【解説】兵庫県知事選のSNS運用めぐり…神戸地検と兵庫県警がPR会社など家宅捜索 捜査の焦点は?
兵庫県知事選でのSNSの運用などに関し、斎藤知事らが公職選挙法違反の疑いで刑事告発されたことをめぐり、神戸地検と兵庫県警は7日、PR会社などの家宅捜索に入りました。これについて、公職選挙法に詳しい元大阪地検検事の亀井正貴弁護士が解説します。
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公職選挙法は、SNSの運用などを主体的に企画立案した業者に対しては、報酬を支払うことを禁止しています。これをふまえた上で、7日までの経緯を整理します。
きっかけは去年11月20日、兵庫県にあるPR会社の代表がインターネットに投稿した内容でした。知事選挙で“広報全般を任せていただいた”とつづられていました。
その後、これに対して斎藤知事側は“広報全般を任せたということは事実ではありません”と、公職選挙法などには違反していないと説明しました。報酬の支払いが認められている、ポスター制作やチラシのデザインなどの5項目に71万円5000円を支払っただけだと主張しました。これ以外のSNSの運用については、PR会社の代表が個人としてボランティアで行っていたとしていました。
ところが去年12月初旬、大学の教授らが、公職選挙法が禁止する「買収」にあたるとして、刑事告発しました。
そして7日、神戸地検と兵庫県警はPR会社などの家宅捜索に入りました。
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鈴江奈々キャスター
「7日、PR会社などに家宅捜索が入りましたが、一番の目的は?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「いわゆる買収事案にあたるかどうか。つまりSNS戦略の対価を得て報酬を得たかについての物的証拠を探そうとしているということです。供述ベースではなかなか立証が難しいので、パソコンから情報データを得ようという考えだと思います」
鈴江キャスター
「家宅捜索のタイミングについては、どうみていますか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「この事案はおそらく警察にとっても検察にとっても最重要だと思います。ですから12月の告発で、おそらく1月に任意捜査をやっていると思う。さらに2月に入ってすぐ家宅捜索ですから、かなり早いタイミングで進んでいると思います」
鈴江キャスター
「それだけ、捜査態勢が大規模になっているということでしょうか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「今、兵庫県警は知事の選挙の事案など、その他もろもろの事案を抱えていてけっこう忙しいはずです。その中で、このタイミングで入るのは、やはり優先順位が高いと判断していると思います」
鈴江キャスター
「検察と警察が一緒に家宅捜索に入ることは、異例でしょうか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「そんなに多くないと思います。通常、警察が入る事案は警察がやって、検察はあとで受ける。検察がやる事案は、警察ではなく検察だけでやるのが普通ですから、両方入る事案は珍しいと思う。これは告発をした人がよく知っているので、こういうやり方をしたんだと思います」
鈴江キャスター
「検察と警察が一緒にやることの最大の狙いは?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「警察がやると、検察が気を緩める可能性があります。ただ最終的に判断するのは検察。だから、判断するところと、第一的な捜査機関の全態勢であたることによって、捜査態勢がかなり強まっていくことを狙ったと思います」
鈴江キャスター
「捜査の最大の焦点はどこに?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「SNS宣伝に対して報酬を払うかどうかについて、たとえば見積もりや企画書、LINEやメールでそれについてやりとりをしていないか。PR会社で非常に重要と思われる、内部の物的証拠を押さえようということですね」
鈴江キャスター
「斎藤知事側は、PR会社とは口頭契約で、契約書としての書面は存在しないと説明しています。契約書がないとなると、決定的な物的証拠を欠くことになりませんか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「ならないです。契約書は表向きの書類。ほしいのは、PR会社がSNS戦略で報酬を得ようと考えていたというような企画書や、SNS対策についての見積もりです。たとえば『5万円でやります』といった見積書がいくつかあるのかどうか、そういうものを押さえていきます。表向きの書類ではなく、まさに内部の資料ですから、そこは大丈夫です」
鈴江キャスター
「PR会社に対して70万円ほど支払っていて、SNS運用はボランティアだったという斎藤知事側の主張が立証されるためには、それが完全にボランティアだったことも捜査の中で明らかになる可能性もあると、考えられますか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「そこが最大のポイントです。71万5000円が、本当にSNS戦略を含んでいないかどうか、という問題です。今のところは含んでいないという証拠がつくられているわけです。ですから、この証拠を打ち破る、SNSも報酬になりうるという証拠が出てくるかどうかです」
鈴江キャスター
「亀井弁護士は検事の経験もありますが、その立場から、立件される可能性は、現時点でどのくらいでしょうか?」
公職選挙法に詳しい 亀井正貴弁護士
「今のところは厳しいと思います。押収した証拠物を分析していく過程で、『SNSについて報酬を払う』と書いてあるようなものが出てこないかどうか。71万5000円となっている見積もりや請求書をつぶせるような証拠が出てくるかどうかだと思います」