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“革のハガキ”コロナ禍で贈るサプライズ

2021年12月6日 21:48
“革のハガキ”コロナ禍で贈るサプライズ

『贈る。』コロナ禍で人との距離が制限されたり、会うことができない日々。変わる生活の中で、自分と向き合う時間や、離れて暮らす大切な人を思う時間も多かった。「日常にサプライズや楽しみを。」“贈る”をテーマに取材しました。

■バングラデシュにある「マザーハウス」の自社工場で作られているのは…

『贈る。』企画の第1回は、途上国から世界に通用するブランドをつくる「マザーハウス」。

バングラデシュにあるマザーハウスの自社工場では、革に郵便番号を刻印する作業が行われています。一体何を作っているのでしょうか。

■「途上国から世界に通用するブランドをつくる」

訪れたのは、ファッションブランド「マザーハウス」の本店。「マザーハウス」は、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、途上国の職人の雇用を生み出し、現地特有の素材を使ってバッグや洋服・ジュエリーなどを生産・販売しています。これまでにバングラデシュをはじめとして、ネパール、インドネシアなど生産地を6か国にまで広げてきました。

マザーハウスの商品はすべて山口絵理子代表がデザインし、途上国で生産されています。

「現場を知らなければ、貧困を解決することはできない」と考えた山口代表は、当時のアジア最貧国バングラデシュの大学院に通いながら現地に2年間滞在しました。クラスメートに「援助よりも仕事が必要なんだ」ということを言われたことがきっかけとなり、現地の雇用を生み出す方法を考え始めたといいます。

マザーハウス山口絵理子代表兼デザイナー
「バングラデシュにはバングラデシュの素材がたくさんあって、その職人しか作れないものがあるっていう固有のものがあることに気がつくんですよね。現場を歩いてると。大国の真似をする途上国っていう存在感ではなくって、彼らしかできないオンリーワンの道を作ってみようということが人生かけてやりたいなと思ったことなので」

必要なのは「ほどこし」ではなく、先進国との対等な経済活動だという思いで、山口代表は2006年、当時24歳で「マザーハウス」を起業しました。今ではバングラデシュの自社工場におよそ250人のスタッフが働いているといいます。

■コロナ禍で生み出した「革のハガキ」

そんな中、コロナ禍で山口代表とバングラデシュの職人が作った商品は“革のハガキ”。このハガキは山口代表自身、コロナ禍で家族に会いに行けない中、「思いにちょっとしたサプライズをのせる」ために作ったものだといいます。革の裏には文字を書けるようになっていて、写真や四つ葉のクローバーなどの小さなプレゼントを入れられるようなポケットがついています。切手を貼れば、ポストで送ることができるといいます。

■コロナ禍、途上国の生産地とのやりとりはオンラインで

年間の7割ほどを途上国の生産地で過ごしていたという山口代表。コロナ禍で、現地に行けないため、ZoomやLINEなどでデザインを伝えたといいます。

マザーハウス山口絵理子代表兼デザイナー
「私は、彼らがコロナ禍でも、新しいもの出したよ、自分たちの力がこうなったよっていうことがなければ、本当の意味の活気みたいなものってなくなっちゃうと思ったんですね。だからこそ小さいものだけど、『マダム、こんなのやったことない、どうしようどうしよう』って言いながらやってる姿が一番エネルギッシュだと思っているので」

山口代表は工場を活気づけるためにも、コロナ禍でも新商品をつくりたいと思ったといいます。しかし、ハガキ文化がないバングラデシュ。日本のハガキの説明から始めたということです。

こうして作られた革のハガキには、切手と郵便番号、マザーハウスの刻印がされています。工場には、それぞれの作業に打ち込む職人たちの姿がありました。

マトリゴール工場マムン工場長
「コロナ禍で全体の出勤者数は減らしましたが、働く機会をつくる面でも、スキルの発展という面でも、他の工場のお手本をつくることができたと信じています。近い将来、バングラデシュでロールモデルとなる工場をつくることができ、他の工場のインスピレーションとなることを望んでいます」

今月3日には2022年とら年の新商品を発売。干支(えと)のとら柄になっていて、新年の挨拶にも使ってほしいとしています。

■山口代表「簡易的な便利な『送る』から、心のこもった『贈る』へ」

マザーハウス山口絵理子代表兼デザイナー
「今って本当に例えばネットでもすぐにポチってやったらギフトが送れる時代、LINEだって送れちゃうじゃないですか。でもそういう簡単な送るじゃなくて手間を2回3回やったもの。というギフトに近い形の贈るというのができたら、すごく気持ちも込められるんじゃないかなというのがありました。簡易的な便利な『送る』から、心のこもった『贈る』の間をちょっとこれで埋められたらいいなと思いました」