大阪のビル火災、短時間で被害拡大なぜ?
大勢が命を落とした、大阪・北新地のビル火災。出火元やクリニックの構造から、短時間で被害が拡大した原因を考えます。一酸化炭素が含まれる黒煙の危険性や、雑居ビルを利用する上での注意点などを、元消防署長の専門家に聞きました。
■「模型」で確認…クリニックの構造は
有働由美子キャスター
「多くの死者を出した大阪・北新地のビル火災ですが、なぜここまで被害が大きくなったのでしょうか。火が出たとみられるのは、4階に入っている心療内科のクリニックです。模型をもとに、元東京消防庁・麻布消防署長の坂口隆夫さんに解説していただきます」
「模型で4階の内部を見てみると、階段とエレベーターがある横に、クリニックの受付があります。中に入ると待合室があり、廊下を挟んで両側に部屋があります。突き当りに診察室があります」
■窓枠が黒焦げに…受付周辺が火元か
坂口さん
「(映像や写真で)窓の焼けた状態を見るとよく分かりますが、一部の窓枠は熱で変形し、部分的に溶けています。一方で、原形のまま残っているアルミの窓枠もあります。この状況から、溶けた部分のあたりが火元とみてよいと思います。かなり激しく燃えています」
有働キャスター
「その部分は、階段や受付がある所です。ここが火元とみてよいでしょうか」
坂口さん
「はい。エレベーターを出て、階段の出入り口から、受付に向かった位置ですね」
有働キャスター
「アルミが溶けるような火が上がるのは、どんな状況だったのでしょうか?」
坂口さん
「火災の場合、室内温度は1000度を超えます。アルミ自体も600度ほどで溶融するので、1000度以上で激しく燃えたことが分かります」
有働キャスター
「仮に奥に人がいたとして、非常階段の位置が分かっても、(その方向に)抜けていくことは不可能なのでしょうか?」
坂口さん
「難しいですね。激しく炎を上げて燃えています。黒煙が多量に発生して天井に上昇し、部屋中に拡散していきます。人は、燃えている方から遠ざかろうとします。このため、部屋の奥の方に逃げていった状況ではないのかなと思います」
■間仕切りの「隙間」で煙拡散か
有働キャスター
「もう1つ、被害拡大の原因として坂口さんが注目されたものがあります。クリニック内部の写真にある天井の隙間ですが、どういうことでしょうか?」
坂口
「間仕切り壁ですが、天井の部分は60センチ近く開いています。火は防げても、煙や熱気を防ぐことができません。煙などは天井部分から拡散していくので、この間仕切りの外側にいても内側にいても、煙を吸うということでは変わりません」
有働キャスター
「実際に焼けたのは全体の3分の1にも満たない約25平方メートル。火も30分ほどで消し止められました。ただ一酸化炭素中毒で皆さん倒れていたといいます。どのように、どのくらいの時間でなるものでしょうか?」
坂口さん
「まず火災の場合は、黒い煙に注意しなければいけません。一酸化炭素などの有毒ガスが多量に含まれています。それを吸うことで、場合によっては1(回の)呼吸、あるいは2(回の)呼吸で、一酸化炭素や多量のすすで喉が閉まり、閉塞状態になってしまいます」
■命を守るには…「非常口の確認を」
有働キャスター
「1回か2回の呼吸でそのような状態に?」
坂口さん
「そういうことです。場合によっては、意識がなくなって倒れてしまう。また長時間吸ってしまうことで、一酸化炭素が酸素に代わって(体の中に)回ってしまうので、酸欠や一酸化炭素中毒になってしまいます」
有働由美子キャスター
「黒い煙を見た時に、身を守る行動はできるのでしょうか?」
坂口さん
「よく、ハンカチなどで口と鼻を押さえると言いますが、今回はガソリンに近いような液体を撒かれて火が付いたと言われていますので、一気に黒い煙が多量に発生するため、なかなか防ぐのは難しいです」
有働キャスター
「今後雑居ビルを利用する人もいます。今回の場合は非常に難しいケースですが、非常階段を確認するのは大切なことでしょうか」
坂口さん
「はい。普段利用しているビルや建物の階段がどこにあるのか、1か所なのか2か所なのか。非常口がどこなのか。場合によっては避難器具が付いているかもしれません。その場所を確認して利用することが、命を守ることにつながります」
(12月17日『news zero』より)