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千島・日本海溝の地震 厳寒だと最悪に!

2021年12月21日 20:51
千島・日本海溝の地震 厳寒だと最悪に!

「最悪だと、およそ19万9000人が死亡する」という国による厳しい想定が公表された千島海溝や日本海溝で起きる巨大地震。特に冬の深夜に地震が発生すると、犠牲となる人が増えてしまう想定ですが、その大きな原因が寒さや雪です。

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◆津波からの避難は時間との闘い、しかし逃げるには雪や凍結が立ちふさがる…

千島海溝と日本海溝でそれぞれM9クラスの巨大地震が発生すると津波が沿岸部を襲い、甚大な被害となります。すぐに高いところに避難すれば、津波の被害からは命を守ることができます。しかし、巨大地震が冬の深夜、それも吹雪のような悪天候の中で発生したら、避難できない人がとても多くなるとの予想が示されました。

寒く雪がふぶく中を避難するには、防寒対策などの準備も必要となりすぐに外に出ることが難しくなります。さらに、道路は凍結や積雪によって車による移動も簡単ではありません。地震の揺れで雪崩が発生しているかもしれません。

北海道・釧路では最低気温が11月から3月まで氷点下となり、特に1月から2月は平均の最低気温が氷点下9℃よりも低くなります。また、海水の温度もオホーツク海や太平洋東岸では平年値で零下となります。

積雪も冬場は消えることなく、釧路の平年では20センチ以上の積雪となっている日が年間23.2日にも達していて、積雪50センチ以上という日もあります。

津波から避難するには時間との勝負になるのですが、克服するにはこの寒さや雪という課題が大きくのしかかってきます。 

◆流氷も被害を大きくする…

冬の北海道周辺は、雪だけでなく海に浮かぶ流氷も押し寄せてきます。この流氷が家屋を直撃するなどして被害を拡大する要因になるのです。

流氷は、気象庁によると、北海道の網走では平年で1月22日から4月6日にかけて観測されています。さらに、北海道開発局によると12月~3月の期間、全道的に河川は結氷し、オホーツク海から十勝沿岸の港では港内結氷がみられるということです。

津波とともに流されてくる流氷によって全壊する家屋は、千島海溝の場合は約5000棟、日本海溝で約3000棟となっていて、これが従来の津波の被害に上乗せされる形となります。このため、最悪の場合千島海溝では約8万2000棟、日本海溝全体で約21万4000棟が津波によって全壊する予想です。

◆一時避難場所に食料も置けない寒冷地の課題…

この厳しい寒さは、防災対策にも影響を及ぼしています。北海道白糠町の地域防災課によると、一時避難場所となっている高台の防災倉庫のコンテナには水や食料が保管できないといいます。その理由が寒さのためです。たとえ置いておいても水は凍ってしまい、緊急時に使えなくなってしまうのです。このため、小中学校などの常時暖房の有るところなど、水が凍らないように対策ができる場所、そして、高台に設置された避難場所に住民が逃げ込むためには、途中の道路が積雪や凍結で車が通れない状況になってはいけないので、いつ地震が起きても良いようにこまめに除雪作業などをする必要があります。

また、避難場所での暖房の確保ができなくなると命の危険にも直結することから、避難場所の暖房器具の整備や燃料の確保、風よけシート、防寒具など寒冷地故に必要となるものを余分に整備しておく必要があるといいます。

◆凍結した場合は死者が大幅に増加、低体温症で失われる命も・・

もしも津波に飲み込まれてしまったら・・海上保安庁によると、人間が0~5℃の海水に浸かった場合、意識がなくなるまでは約15~30分、そして30~90分で死に至るといいます。

千島海溝や日本海溝の巨大地震の想定では、エリア一帯が凍結するような状態では、津波による犠牲者が千島海溝の地震で約4万4000人から4万9000人に、日本海溝の地震では約4万7000人が約6万1000人と大幅に増える予想です。

さらに、低体温症になってしまい、救助や何らかの処置が必要となる要対処者の数は、千島海溝での地震で、約2万2000人、日本海溝の地震では約4万2000人にも達する予想です。

東日本大震災では、津波に一度は飲み込まれたものの近くの人に助け上げられたり、運よく何かに引っかかったりして命が助かった人が多くいました。しかし、その後待っていたのが、着替えもないまま一夜を過ごさざるを得ないという現実でした。3・11の夜は雪も降り、気温もかなり厳しく冷え込み、ぬれた体に寒さが容赦なく襲い掛かり、低体温症で亡くなった(凍死)ケースも少なくありませんでした。

◆低体温症から命を守る対策とは…

低体温症の要対処者は、すぐに体を温めるなどの処置をすることができれば、命を守ることができます。

内閣府は、高台に逃げたものの、そこに住み家などがないようなところは、高台の避難先にちゃんとした防寒具を事前に備え付けたり、さらに住み家のあるところまでの2次避難路を整備するといった対策を事前に準備することで、被害は軽減できるとして、地域に応じた対応を進めてほしいとしています。

写真:北海道白糠町での津波被害の想定画像(白糠町提供)