その成長は早すぎない? 娘のおっぱいが膨らんだ「思春期早発症」ってナニ? 男の子は特に注意を
こどもの成長は早い。そう感じる親は多いと思うが、ある日こどもの体を見て、さすがにコレは早すぎるのでは?という心配をしたことはあるだろうか。当時、小学1年生(7)だった娘の訴えから知った「思春期早発症」について取材した。新型コロナウイウルスの流行を機に受診するこどもの増加も見られるという。
■突然の訴えに動揺したのは親である私だった
ある日突然、7歳になったばかりの娘が困った様子で訴えた。「ママ、おっぱいがチクチクするの」。「どうしたんだろうね~?」などと声をかけながら、娘の胸の状態を確認すると……膨らんでいる!?まったく想像もしなかった事態に、動揺する自分がいた。娘の体に起きている異変は一体何なのか。深夜のネット検索でにわか知識を得つつ、まずは、かかりつけ医に相談。そこで指摘されたのが「思春期早発症」だった。
■「思春期早発症」とは?
その文字通り、思春期が早く来てしまう病気だ。他の子よりもひと足早く“おませさん”になるだけならまだしも、中には脳腫瘍が見つかるケースもあるそうで、国立成育医療研究センター内分泌・代謝科の内木康博医長に話を聞いた。「思春期早発症」には、まず、主な症状として以下のものが挙げられると言う。
〇女の子の場合・7歳6か月までに乳房が膨らむ・8歳までに陰毛が生えたり性器の色素沈着がみられたりする・10歳6か月までに生理が始まる
〇男の子の場合・9歳までに外性器が発育する・10歳までに陰毛が生える・11歳までにヒゲが生えたり声変わりしたりする
男の子の外性器の発育は見た目で分かりにくい状況もあり、症状がだいぶ進んでから受診となるケースも多いのだという。
■成長度合いが分かる“手”のレントゲン撮影
診断では、出ている症状の確認に加え、身長の伸び具合や、血液検査でホルモン値も診る。そして、よく行うのが“手のレントゲン撮影”だ。比較的、撮影しやすい部位であることに加え、手の骨の大きさや形を診れば、そのこどもの成長度合いが、年相応かどうかが分かるという。
■どんな治療がある?半数以上が“体質”
診断の結果、所見が認められた場合は、早すぎる成長を止めるために月1回程度、ホルモンの分泌を抑える効果のある注射を打つ治療がある。内木医長によれば、これは子宮内膜症や不妊治療などにも使われているもので、こどもに使用しても将来の体への影響を心配する必要はないという。
また、この治療は、極端に早く身長が伸びてしまうことで成長が止まり、低身長にとどまることが懸念される際や、変化のあった体の特徴を友達に指摘されたり生理が早く来てしまったことで学校生活に支障を来したりする場合などに検討されるもので、実際に治療に進むケースは半数にも満たないとのこと。出ている症状を“体質”と捉え、経過を見ながら過ごすことも多いという。
■特に男の子は症状が見られたら要注意
ところが、中には注意が必要な場合もある。内木医長によれば、男の子は“脳腫瘍”がある場合にも、思春期早発症の症状が見られることがあり、血液検査で腫瘍マーカーを確認し、少しでも陽性だった場合は、より精密な検査へと進めていく必要があるという。
さらに、早産などで小さな体で生まれたこどもは、思春期早発症を発症しやすい傾向があるという。身長がなかなか成長曲線にのらず、ようやく背が伸びて同年代のこどもに追いついたと思ったら、あっという間に伸びが止まってしまうこともあるそうで、より気をつける必要があるというのだ。
■新型コロナを機に増加傾向の受診者数
実はこの思春期早発症は、新型コロナとの関連性も注目されている。国立成育医療研究センターの内分泌・代謝科の外来では、新型コロナの流行を機に、成長が早いことを心配して受診するこどもの数が増えていた。内木医長によると、同様の傾向が、海外の論文や国内の学会でも発表されているという。ロックダウンで外出できない生活がこどもの肥満につながり影響した可能性や、病気に対する親の関心の高まりなど、様々な要因が考えられ研究されているものの、まだはっきりとしたことは分かっていないのが実情だ。
■違和感があれば早期の受診を
思春期早発症の疑いがあるとされた私の娘。数か月待ちで予約がとれた専門病院で検査をしてもらった結果、直ちに治療の必要がある状況ではなく、経過観察となった。
自分の体が人と違い、おかしな所があるのではないかと、顔色が曇る娘に対し、安心させる声かけができていたかを自問自答する。「他の子よりもちょっと成長のペースが早いだけだよ」内木医長は外来で、そうこどもに話しかけるという。そして、こどもの病気も自分の責任と考えがちな、私たち親へのアドバイスとして「こどもの成長の様子に違和感があったら、早期に病院で相談し、経過をみてあげることが大切だ」と話す。