×

利用者減、補助金減…苦境“病児保育”の今

2022年1月8日 18:18
利用者減、補助金減…苦境“病児保育”の今

病気にかかった時に保育園などに通えない子どもを一時的に預かる“病児保育”。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い利用者が減る施設が出てきています。苦境に立たされる病児保育の今を取材しました。

東京・大田区。午前8時すぎ、子どもを連れた親たちがぞくぞくとやってきます。

「全然眠れてなくて結局体も熱いので、測ってみたら37度8分」

ここは病気やその回復期の子どもを看護師や保育士らが預かる“病児保育”急に仕事を休めない共働きやひとり親家庭にとっては頼みの綱です。

利用者「子どもって急に体調が悪くなったりするんで、ここの(病児保育)施設がないと仕事は続けられなくなったり」「(病児保育は)不可欠といって過言ではないですね」

 ◇◇◇

しかし今、新型コロナの影響で苦境に立たされる施設があります。神奈川県大和市の病児保育室「十六山病児保育室Bambini」。室長の西田恵美さんです。3児の母でもありこれまで育児と両立し大使館で働いてきました。

西田恵美室長「お母さんたち(看病で)寝られてないんだろうな、寝られないままお仕事に向かわれるんだろうな、すごいなとか、本当にできることは何でもして差し上げたい」

この日も、やってきたのは2歳の男の子を連れた父親。妻は出産を控え里帰り中だといいます。

「(きのう)38度9分」
「38度9分、結構高めのお熱出ちゃったんですね」

ベビーシッターが見つからず、ようやくこの病児保育室に。

利用者「仕事もいま抜けられないくらい忙しくなってきまして、ワラにもすがるような思いではあったというところも」

しかし、開設2年目…。

西田恵美室長「昨年度は電話も鳴らないくらい閑古鳥鳴いていて、どうなっちゃうのかなって」

2019年度、年間453人の利用があり、堅調な利用者数の伸びを想定していたこの施設。ところが、新型コロナウイルスの影響で親の不安感などから利用者が2年ともに9割ほど減少したのです。

もともと運営費の3分の1は国や自治体からの補助金でまかなっており、その補助金は、利用者数に応じて算定。昨年度に国の特例措置で以前の利用者数に応じた950万円ほどが出されるなどしましたが、今年度も利用者数は戻らず、見込み額からは1000万円以上の減額に。

西田恵美室長「本当に風前の灯(ともしび)みたいなところで行政の対応によっては閉室に追い込まれてしまう」

一方で、こんな現象も…。

西田恵美室長「コロナの間でも登録が増えた分」

2年間で300人近い利用希望の登録があったといいます。

利用希望登録者「(子どもの)体調が悪い時はもちろん休んであげたいんですけど、やっぱり登録しているだけで心強いというかお守りというか」

 ◇◇◇

必要とされながらも、全国およそ6割の施設が赤字経営だといいます。

全国病児保育協議会・大川洋二会長「多くの施設から来年続けられないと、ソーシャルセイフティーネットとして、今ここで病児保育の灯を消してはならないと思います」

 ◇◇◇

そんな中、新たな動きも。埼玉県越谷市。去年10月、子育て世帯が多く暮らす地域にオープンした病児保育室。小児科クリニック併設の施設にはある特徴が…。

みんなでつくる病児保育室 つむぎのおうち・吉岡医師「棚の中全部いただいたものになります。絵本もそうですし、おもちゃ類もそうですし」

自治体からの補助金に頼らず、施設で使用するほとんどのものを地域の人々や企業からの寄付、クラウドファンディングでまかなっているといいます。

吉岡医師「“みんなでつくる病児保育”を具現化していこうっていう。自主運営で大変なチャレンジではあるんですけど、子どもたちの健全な成長に必要なものだと思っているし、子どもたちの健全な成長に必要なものだと思っているし、(親の)就労支援というのもあると思う」

親の孤立を防ぎ、未来を担う子どもたちの支えにもなる病児保育。「こども家庭庁」創設の議論が続く中、今その存続が求められています。