“命の危険”も 硫化水素含む蒸気噴出 用水からヒ素検出…住民説明会で批判相次ぐ 三井石油開発 北海道蘭越町
北海道蘭越町の地熱発電の調査現場で大量の蒸気が噴き出している問題で、掘削を行っている三井石油開発が4日、初めて住民説明会を開きましたが、住民からは「説明が遅すぎる」と批判が相次ぎました。蒸気に含まれる人体に有毒な「硫化水素」と、噴出物による「農作物被害」が懸念されますが、三井石油開発は被害にあった農家に補償する方針を示しています。
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北海道蘭越町の山奥に立ち上がる白い水蒸気の柱。近くで見ると、すさまじい勢いで噴き出しています。
記者
「ゴーという音が聞こえ、時折、硫黄のようなにおいが鼻を刺激します」
この蒸気は先月29日、突如として噴出しました。現場は、蘭越町の北部、観光スポット大湯沼のすぐ近くです。三井石油開発が地熱発電の調査のため、掘削作業を行っていた現場でした。
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蒸気噴出から5日たった4日夜、掘削を行う三井石油開発が、初めての住民説明会を開きましたが、住民から次のような批判が相次ぎました。
説明会の参加者
「説明が遅すぎる」
「目の前で何が起きているか分からず、どんな空気か分からないものを吸い、井戸水を飲んでこの5日間不安しかない中、暮らしてきた」
「健康被害があるかヒアリングや連絡もない」
「何も安全じゃないんでしょ」
今回の蒸気噴出による住民への影響は、大きく分けて2つあります。まず人体に有毒なガス「硫化水素」が含まれていたこと、そして噴出した石英などが流れ込み、川が白く濁るなどして農作物に被害が出ているということです。
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「硫化水素」を巡っては、当時、掘削現場に弁当の配達に来ていた女性に被害が出ています。
蒸気が噴出した当時 現場近くにいた女性
「頭痛と吐き気がして。硫化水素中毒という形で処置していただいた」
「硫化水素中毒」と診断され、入院する事態となっています。硫化水素について医師に聞きました。
大阪府立中河内救命救急センター 岸本正文医師
「ゆで卵が腐ったようなにおいがする。毒性が強くて呼吸障害になり、死に至ってしまうガス。空気よりも少し重くて、くぼみとかにたまってしまう。においを感じたら、その場所からできるだけ逃げるのが一番いい」
命の危険もある硫化水素が含まれていたことを、三井石油開発は4日まで公表していませんでした。その理由について、次のように述べています。
三井石油開発 地熱事業部 瀬戸内貴司部長
「現場をどう鎮圧するかの対応に忙殺され、住民に状況を説明する場をもてなかった」
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そして、町の基幹産業でもある農業への影響についてはどうでしょうか。
三井石油開発は、一部の川から農業用水の基準値の約2倍のヒ素が検出されたことを明かしました。現在、周辺の農家では消防車が水を運搬することで代用しています。
農家
「給水活動がそのまま満足に続けてもらえるのか、第一に不安。それができないとなった時にどういった措置が取られるのか」
多くの水が欠かせない米農家への影響は…
米農家
「続いてしまうともうダメですね。10日もすればレッドゾーン。今年はダメだねって」
企業側は、被害にあった農家に補償する方針を示しています。
(7月5日『news zero』より)