【解説】あなたの住む地域で巨大地震が発生する確率は? 南海トラフ巨大地震「30年以内70~80%」→「80%」に引き上げナゼ?
■巨大地震の想定震源域で地震
1月13日~19日までの期間、震度1以上の地震は45回ありました。
▼16日午前7時半ごろ、青森県階上町と東通村で震度3を観測する地震がありました。震源は青森県東方沖、地震の大きさを示すマグニチュードは4.8、震源の深さは53キロでした。
▼16日午前9時過ぎには、千葉県館山市で震度3を観測する地震がありました。震源は千葉県南東沖、マグニチュードは4.4、震源の深さは46キロでした。
南海トラフ地震の震源域でも地震がありました。
▼13日午後9時19分、日向灘でマグニチュード6.6の地震があり、宮崎市や高鍋町、新富町で震度5弱を観測しました。
日向灘では、去年8月にも大きな地震が起きていて、一連の地震活動とみられています。今回の地震では「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が出され、最大マグニチュード8~9クラスともいわれる巨大地震との関連性が調査されました。
改めて、臨時情報の仕組みを振り返ります。
巨大地震の想定震源域でM6.8以上の地震が発生した場合、巨大地震発生と関連があるか、検討会を開いて慎重に地震の大きさを調べます。もし結果がM7.0以上であった場合、「巨大地震注意」を発表します。13日の地震では精査の結果、最終的にM6.6となったため、「巨大地震注意」は出されず、調査終了となりました。
“基準となるM7.0とはわずか0.4の差”ですが、マグニチュードが1違うとそのエネルギーは約30倍、2違うと約1000倍の差があります。M7.0というのは、今回の地震(M6.6)の4倍程度、規模の大きな地震となります。
■南トラ巨大地震の確率「80%程度」へ引き上げ、なぜ?
ただし、南海トラフ地震はいわゆる「平常時」であっても、高い確率で地震がおこるとされていることを忘れてはいけません。さらに、先週の「地震調査委員会」の発表でも長期的な確率は引き上げられました。
これまで南海トラフでは、M8~9クラスの巨大地震が、30年以内に「70~80%」の確率でおこるとされてきました。今回の発表では、これが「80%程度」に引き上げられています。
13日の日向灘の地震による影響で異変が…というわけではありません。巨大地震の発生確率は、「過去の地震の発生間隔」や「直近の地震」から計算されています。地震がおこらなければ、時間の経過とともに地震の確率は少しずつ高まっていくのです。
また北海道沖合にある「千島海溝」と、東北から関東沖にある「日本海溝」周辺でも一部で巨大地震発生の確率が上がりました。
十勝沖では、今後30年以内にM8~8.6程度の地震がおきる確率が10%程度から20%程度に引き上げられました。ほかにも、宮城県沖では80~90%の高い確率で、M7.4前後の地震がおこるとされています。
■太平洋沖だけではない…「Sランク」活断層は?
さらに、活断層(=過去に繰り返し地震をおこしてきた断層)についても発表しています。阪神淡路大震災などはこの活断層による地震でした。
全国で主要な114の活断層のうち、30年以内の発生確率が3%以上と、最も高い「Sランク」の活断層に指定された場所が赤色で示されています。
今回、新潟県の「長岡平野西縁(せいえん)断層帯」が新たにSランクに入りました。大きな都市の真下にも、例えば、福岡の「警固(けご)断層帯」、大阪の「上町(うえまち)断層帯」などのSランク断層があります。
最も高い長野県などの「糸魚川―静岡構造線断層帯」の一部では、30年以内の発生確率は14%~30%でした。
■「活断層」地震の発生確率は小さい?
南海トラフの「30年以内80%程度」と比べれば、活断層の地震は低い確率にも見えます。
地震の専門家、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんによりますと、活断層による地震は数千年単位と発生間隔が長いため、30年の区切りで見ると、発生確率は小さく見えます。ただ、「確率が低い=地震が起こらないという意味ではなく、いつかは必ず発生することを意味している」と注意を呼びかけています。
残念ながら、Sランクの地域だけが危ないわけでもありません。2016年の熊本地震は直前の評価では、30年の発生確率がほぼ0~1%でした。2024年の能登半島地震も、公表されていた活断層図とは別の、海底の活断層で大きな地震が発生しています。
改めて全国どの地域であっても油断せず、地震への備えをすることが大切です。