「娘の11年認められた」聴覚障害による逸失利益 大阪高裁「将来収入は健常者と同等」減額判断を変更
娘を事故で失った両親らが、将来得られるはずだった収入を障害を理由に減額して賠償金を計算するのは不当だと訴えた裁判の控訴審で、大阪高裁は20日、一審の85%に減額した判断を変更し、健常者と同じ100%で計算すべきとの判断を示しました。
娘の命を奪われた事故から7年。
長女を亡くした井出努さん
「奇跡が起きたという実感です」
司法の壁と闘い続けた遺族に希望の光が差し込みました。
井出さん夫婦の長女、安優香(あゆか)さんは、生まれつき耳に障害がありました。2018年、大阪市生野区で、当時11歳だった安優香さんは重機にはねられ、亡くなりました。
両親が運転手らに損害賠償を求める民事裁判で争われているのは、安優香さんが将来得られるはずだった収入、「逸失利益」についてです。
両親は、全ての労働者の平均年収で計算するよう主張しましたが、一審の大阪地裁は障害を理由に「全労働者の85%の年収」と判断しました。
その後、両親は控訴。娘の努力を無駄にはしたくありませんでした。
話せるようになるために生まれてすぐのころから補聴器をつけて外部の音に触れ、親子で発音も一音一音、学んできました。亡くなる直前の運動会ではスピーチを任されるほどに成長しました。
安優香さんの父親・努さん
「生きていれば18歳で、将来に向けての夢や希望があったと思うんです。娘が働く時、どういう世の中になっているのか、想定したうえで裁判所が前向きに判断するべき…」
そして迎えた、この日の判決。大阪高裁は「安優香さんは補聴器に加え、手話や文字を使用して学年相応の学力があり、将来、健聴者と同じ職場で同等に働くことが十分可能だった」として、一審判決を変更し「全労働者の平均賃金で計算するのが相当だ」と判断しました。
弁護団によりますと、聴覚障害のある人の逸失利益を健常者と同等に計算すべきとの司法判断が示されるのは全国で初めてだということです。
安優香さんの父親・努さん
「きょうの判決を受けて、もう娘のことで泣くのはやめようと私は思います」
安優香さんの母親・さつ美さん
「安優香の11年が認められたんだという気持ちになり、そこから涙が止まりませんでした。安優香、11年間、本当にママ幸せだったよ、ありがとうという言葉を、きょう家に帰ってたくさん伝えたいなと思います」