【特集】冬眠しないクマ 無人カメラがとらえた姿から浮かび上がる課題とは "クマリテラシー"を考える
本来は冬眠の時季にもかかわらず、県内ではクマの出没が相次いでいます。
先月下旬に美郷町で撮影された映像では、クマが勢いよく雪をかき分けて進んでいます。
このようにクマが徘徊する集落に、取材班が無人のカメラを仕掛けて、冬眠しないクマの姿をとらえました。
行動を観察すると、課題が浮かび上がってきました。
■冬も人里に依存するクマ
「でかいよ!かなり」
動画が撮影されたのは、五城目町の山あいにある富津内地区。
連日クマが姿を現し、徘徊していました。
実際に集落を訪れると、あちらこちらにクマの足跡が。
住民
「見たっけクマ、その小屋の影から歩いてきたべ。あいー、大変だなって」
「もし(クマが)来て転んだりしたら大変だから、家から出るなって。1週間(家から)出られない」
クマの目当てになっていたのは、カキの木です。
枝に付いた実はすでにすべて食べつくされていました。
それでもやってくるクマは何をしているのか。
無人カメラを設置して、行動を観察することにしました。
カメラ設置から約16時間後。
まだ夜が明けきらない午前4時ごろに、クマの背中が撮影されていました。
動画には、カメラを気にしているのか、しきりに鼻と口を近づける様子が。
クマがいた場所を確認すると、雪を掘り起こし、埋もれていたカキを食べた痕跡がありました。
住民
「カキには来なかった、今まで」
「こういうこと何にもなかったのにな」
集落に点在するカキの木。
クマを引き寄せる要因になるため、対策として伐採が有効ですが、その多くは空き家の敷地にあり、手をつけづらい状況でした。
浮き彫りになる、クマ出没と人口減少の関わり。
■対立と分断 クレーム問題
クマを巡って、今、深刻な分断と対立を生んでいるのが、駆除に関するクレームです。
秋田市のスーパーにクマが居座り、捕獲されたときには、5日間で176件の苦情や意見が市に寄せられました。
「ハチミツで誘い出して殺すなんて可哀想です。クマにも家族がいるでしょうに」
「絶対駆除は必要です!クマは撲滅すべきです!」
「血も涙もないのですか?罪のないクマが殺されてかわいそうです!」
■いまこそ"クマリテラシー"を
クマ対応の最前線にいる、県の専門職員、近藤麻実さん。
クマは冬眠するという今までの常識が通用しない状況を踏まえ、正しい知識の普及啓発に力を入れています。
近藤さん
「全国からの声が人を追い詰めます。親子グマで炎上した役場の方は、いまだにつらい精神状態にあります。そのくらい過熱だった」
「人とクマとの距離がどんどん近づいて、もう本当に重なり合いながら暮らしている今の時代ですので」
「地震とか津波とか豪雨災害とかそういうものから身を守る知識」
「クマのリテラシーを持っておく必要がある」
「遠くのクマ」から「隣のクマ」へ。
時代の変化に合わせたクマとの関係性の再構築が、今、求められています。
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なぜクマは冬の間も人の生活圏に出没し続けるのか。
冬眠のメカニズムやクマの対応に迫ります。
特別番組every.+「冬眠しないクマさまようクマ」は、来月2日の午後1時10分から放送します。