「卒業対策費」のナゾ……「勝手に決められた」異論も2万5000円の使い道は? 卒業文集やめる学校も【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「卒業時に2万5000円…必要?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●半ば強制…何に使われる?
●卒業文集も「負担」に
小野高弘・日本テレビ解説委員
「保育園や小中学校の卒園式や卒業式が始まりましたね。晴れやかに迎えたいところなんですが、卒業するにあたって保護者が支払うお金というのがあります。それをめぐって、異論が出ているというんです」
「全国の小中学校の多くで、こんな慣習があります。PTAなどが中心になって、卒業する児童生徒の保護者からお金を集めるというものです」
鈴江奈々アナウンサー
「PTAの会費は私も払ってるんですけど、その相場からすると、卒業時に2万5000円というのはちょっとびっくりする金額でした」
小野解説委員
「この春、娘が東京の区立小学校を卒業するという40代の母親は『卒業対策費として2万5000円払いました。保護者みんなの理解が得られていないのに勝手に決められている』と言います」
辻岡義堂アナウンサー
「2万5000円はかなり高額な感じはしますよね。どういうことなんでしょうか?」
小野解説委員
「卒業時に保護者から集められるお金は『卒業対策費』と呼ばれています。費用は2万5000円と決まっているわけではなく、学校によってまちまちですが、何に使われるのでしょうか」
「例えば、写真立てや文房具などに『卒業記念』と名入れしたものがありますが、そういった卒業記念品や卒業アルバム、卒業証書を入れる筒など。卒業証書は学校が出すものですが、筒は保護者がお金を出している場合もあります」
「さらに、卒業式で胸に着ける花のコサージュもあります。学校によっては先生への感謝を示す謝恩会も開かれ、その食事の経費というのもあります。例えば、これらをワンセットにしてトータルで2万5000円支払ってください、と求められるわけです」
市來玲奈アナウンサー
「もしかすると、人によっては『これは必要だけど、これはいらないかな』というものもあるかもしれないですよね。そういう場合も全員から集めるということですか?」
小野解説委員
「本来は任意なんですよ。しかし、強制的に徴収された上にパッケージになっていると。『これって必要ですか?』『おかしくないですか?』と言う保護者もいらっしゃいます。3人の方にうかがいました」
区立小学校の保護者Aさん
「職員室へのお菓子代ですね、あとは花束ですとか。図書カードが含まれてました。高額であるということが第1の問題であるということと、公立の学校なのに、子どもを卒業させるためだけにそのお金が要求されることは問題ではないかなと」
私立幼稚園の保護者Bさん
「必ず必要というのはなくて、うちの子だけないのはかわいそうだから、仕方なくじゃないですけど…買ってるところが多いんだと思うんですね」
小野解説委員
「区立保育園の保護者Cさんは、卒業対策費を集めるメンバーに参加しませんでした。そもそも任意だった上、仕事が忙しかったからで、卒業対策費も払っていませんでした。すると、卒園前の最後の運動会でこういった目に遭ったそうです」
保護者Cさん
「10月に運動会があったんですけど、うちの子以外の子どもたちがTシャツにおそろいの丸い大きなシールが貼られていて、うちの子はそれを見た時に、うちの子だけがシールをしていなかったので、『仲間外れにされた』と運動会中ずっと泣いていました」
小野解説委員
「その運動会の時の写真を見ると、お子さんが泣いています。他の子はみんなシールを貼っていますが、この子には貼られていません。シールは卒業対策にあたる保護者らが当日持ってきたもので、持ち込まれるとは保育園側も知らなかったということです」
「Cさんは『子どもが楽しみにしていた運動会で影響があるなんて思ってもいなかったし、おかしい』と話しています」
鈴江アナウンサー
「卒園式と運動会はそもそも別のイベントですし、任意の参加でこういった差が出て子どもが泣いてしまう事態というのは、なんとか避けられなかったのかなと思いますね」
小野解説委員
「インタビューに応じてくれた皆さんは『先生に感謝を示したい、子どもに何かをしてあげたいという気持ちはもちろん理解できます。ただ、みんなが納得できる形にはなっていないんじゃないか』と話しています」
小野解説委員
「こうした中、公費での補助を始める自治体も出てきています。千葉・長生村では来年度から村立の4つの小中学校の卒業アルバムの作製費を公費で補助する方針を決めました。1人あたり1万円です。家庭の費用負担が大きくなってきたことも理由の1つです」
辻岡アナウンサー
「これなら不満などは出たりしないですもんね。いい方策かもしれませんね」
小野解説委員
「今、『隠れ教育費』と言われるお金が増えています。特に公立の小中学校なのに保護者が私費で負担しなければならないお金です。文部科学省によると、2021年度に公立小学校に通う子の保護者が学校教育に支出した額は約10万5000円でした」
「例えば給食費やランドセル、鍵盤ハーモニカなどです。中学校でも制服や体操服などの購入はあります」
市來アナウンサー
「確かにいっぱい買ってもらいました。こういうものがあって、同級生のみんなと同じ時間を共有してすごく楽しかったなということを思い出すと、改めて両親に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます、という感じです」
「でも、それぞれのご家庭にいろいろな事情がありますから、こういったことになると負担は大きくはなりますよね」
小野解説委員
「そうなんですよね。ここからは、『卒業文集も負担に?』というポイントについて考えます。将来の夢や学校の思い出などを書いた卒業文集を冊子にするのにかかるお金を、卒業対策費から保護者が負担している場合もあります」
「授業中に書くこともあり、その文章のチェックなど編集作業を教員が行っているところが多いそうです。そうすると教員の負担になっているということで、その理由で卒業文集の制作をやめるという学校も出てきているそうです」
忽滑谷こころアナウンサー
「私が学生だった頃は卒業文集はすごく楽しみなもので、今でも見返す思い出の品になっているので、なくなってしまったらちょっと寂しいですよね。でも作るにはお金も時間も負担がかかってしまうので、悩ましいですね」
小野解説委員
「今回注目した卒業対策費はいろいろな問題があります。学校にかかる保護者負担の問題に詳しい千葉工業大学教育センターの福嶋尚子准教授に聞きました」
福嶋准教授
「全ての保護者から一律でいくら集めて『花束を贈ります』『お金を包みたいと思います』というふうになってくると、寄付の強制、お礼の強制という形になっていくので、卒業対策費という名前がついていようといまいと、すごく問題が大きい」
小野解説委員
「福嶋准教授はまた、『多くの家庭では負担だなと思いつつ支払う一方で、経済的に負担が重すぎて参加が難しい家庭もあるため、みんながお祝いできるように考え直した方がいいところもあるのでは』とも話していました」
鈴江アナウンサー
「子どものために、というマジックワードで『ん?これちょっと高いな』『これどうなんだろう』と思っても言い出せないことってありますよね」
辻岡アナウンサー
「現実問題ありますね」
鈴江アナウンサー
「感謝の気持ちの表し方や、経済的な状況は人それぞれだと思います」
「幹事の皆さんも保護者の皆さんも、お忙しい中取りまとめするのは本当に大変だと思いますが、丁寧なコミュニケーション、そしてお金がない状況の方も想像してお金をかけない工夫というのも案として出せないのかなと思いますね」
小野解説委員
「卒業式には児童生徒も保護者も、疑問を持たずにスッキリとした気持ちで臨みたいものですが、児童生徒が主役です。その全員に大人の皆さんのお祝いの気持ちが率直に、そして分け隔てなく伝わるような卒業式になればいいと思います」
(2024年3月15日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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