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「子どもが差別…」卒業準備の“卒業対策委員会”は必要なの?保護者が座談会で語った本音【#みんなのギモン】

2024年2月16日 7:02
「子どもが差別…」卒業準備の“卒業対策委員会”は必要なの?保護者が座談会で語った本音【#みんなのギモン】

まもなく迎える、卒業シーズン。
保護者にとっては我が子の卒業(卒園)を晴れやかに迎えたいところですが、この「卒業」に向けて、いま、ある“委員会”が議論の対象となっています。それは「卒業対策委員会」です。通称「卒対」と呼ばれ、卒業予定の子を持つ保護者が有志で集まり、卒業生を祝ったり、先生に感謝を伝える“謝恩会”の実施や卒業生への記念品を準備したりする委員会のことです。問題となっているのは、この費用です。委員会が「卒業対策費」として保護者から徴収し、支払いはあくまで「任意」とされています。

しかし、私たちの元には、「強制的な集金」や「子どもが差別を受けた」といった保護者の声が…。いったい何が起きているのでしょうか。保護者による座談会を開き、その実態を取材しました。
(調査報道班 及川光昭)

■母親 「卒業対策費は2万5000円」

私たちの元に、ある保護者からの“ギモン”が寄せられました。

「卒対費で購入する品目など、保護者みんなの理解が得られないまま決められている事に疑問があります」

情報を寄せてくれたのは、この春、娘が小学校を卒業するという40代の母親です。母親によりますと、卒業対策費(卒対費)として2万5000円を保護者が支払い、「卒業アルバム」や「記念品」などを購入する仕組みだといいます。しかし、この記念品の一部には、学校行事の“思い出”づくりの物も。

卒業する娘の母親
「修学旅行で6年生が着るおそろいのTシャツもありました」

さらに。

卒業する娘の母親
「卒対の品目で必要がないと思うのは謝恩会です。お菓子代と飲み物代が卒対費に入っています」

母親は、卒業証書を入れる筒やコサージュなど、卒業式で子どもたちが本当に必要なものだけを学校が用意し、その他の品目は「なくてもいいのではないか」と話します。

■卒業生の保護者「卒業アルバムは5000円、幼稚園への寄付は1000円」

疑問を抱く保護者もいる“卒業対策委員会”。
実態はどんなものなのか?私たちは、子をもつ3人の保護者と座談会を聞き、話を聞きました。

まずは、子どもが関東の私立幼稚園に通う、保護者のAさん。卒業対策委員会の役員で、会計係を担当しているといいます。

“卒対”のメリットについて、こう話します。

保護者Aさん
「やはり、卒園アルバムですね。子どもが大きくなったときに見返して『こんなこと頑張ったよね』と“思い出”としてつくってあげられるのはメリットかなと思います」

一方で、“卒対費の集金の仕方”については疑問があるといいます。

保護者Aさん
「以前は、保護者全員がお金を払っていました。全員が寄付をすることが前提で『お金を集めます』というのは私はちょっと疑問に思っています。寄付は任意なので、今年度は寄付の意思がある人だけ集めるようにしています」

その“卒対費の使い道”は。

保護者Aさん
「アルバム代が5000円ほど、幼稚園への寄付が1000円、先生への花束代が大体200円です。保護者は、『みんなが持っているのにうちの子だけが持っていないのは“かわいそう”』という理由で、仕方がなく払っている人は多いと思います。一番必要がないと思うものは『幼稚園への寄付』と『先生への花束』です」

Aさんは、“幼稚園への寄付”や、“先生への花束”は本当に必要なのかと疑問があり、お金を払いたくないといいます。

■「教員の写真入りミネラルウオーター」「図書カード」を寄贈

寄贈は、別の卒対でも…
都内の区立小学校に子どもが通う、保護者のBさんの場合は。

保護者Bさん
「職員室へのお菓子ですね。あと余った卒対費で、教員の写真をラベルにしたミネラルウォーターの制作費をなぜか保護者たちが支払っているんです」

さらに。

保護者Bさん
「図書カードは、担任の先生たちに向けたものです。そういう物を渡すことが慣例化していることが一番の問題だと思います」

また、Bさんは、“卒対費”で卒業文集も購入していることについて、“国語の授業の一環で作っている文集は“学校の予算”で購入すべきではないか”と話します。

■卒対“非加入”の保護者「子どもが運動会で差別をうけた」

東京都墨田区在住で、保育園に通う子を持つ保護者のCさんは、多忙のため“卒対”に加入しない判断をしたといいます。ところが、保護者が“卒対”に入っていないことで、子どもに影響が及んでしまったと話します。

保護者Cさん
「去年の秋に運動会があったのですが、うちの子以外の子どもたちのTシャツには、(卒対が用意した)お揃いのシールが張られていました。うちの子がそれを見たときに、“仲間外れにされた”と思い、ずっと泣いていました」

自宅で練習に励み、運動会を楽しみにしていたというCさんの子ども。当日、卒対が用意したシールの持ち込みは、保育園側も知らなかったといいます。

保護者Cさん
「年長で最後の運動会でしたので、とても悲しい運動会になってしまいました。 子どもたちのためにやるのであれば、全ての子どもたちに平等にシールが配布されなければならないはずなのに、大人(卒対)が子どもを仲間外れにするという行為が、その保育時間中にされたということが一番の問題だと思います」

Cさんは、運動会終了後、園長や、園を管理運営する区の担当者と
相談。その後、区は園や保護者に対し、「保護者全員の同意がない制作物の持ち込みは禁止」するよう通知をしたといいます。

Cさんは、“卒対”の活動の許可を認めている園や行政側が、子どもに不利益がないようガイドラインを作ってほいしいと訴えています。

■専門家「卒対費は隠れ教育費」「教員への寄贈は法律で禁止」

“卒対”非加入によっておきる、子どもの不利益について専門家は。

千葉工業大学 福嶋尚子教育センター准教授
「子どもが孤立するという状況を、保護者(卒対)が生み出してしまっているわけなので、保護者が介入して行うということは、非常に問題が大きいと思います」

こう話すのは、学校にかかる保護者負担の問題に詳しい、千葉工業大学の福嶋尚子教育センター准教授です。“卒対”についてこう指摘します。

福嶋尚子教育センター准教授
「卒業対策は、子ども達が長い教育課程を修了することを、みんなで祝うことが本来の趣旨のはずですが、お金を集めて、何かを買い、子どもや学校に渡すということがメインになってしまったことが問題なのかなと思います。本来はお金をかけなくても、お祝いは出来ると思います」

さらに。

福嶋尚子教育センター准教授
「卒業対策費という名目で、何に使うかも分からない、必要な物かも分からない物に、かなりの高額なお金を否が応でも支払わされているという状況。これは『隠れ教育費』の中でもすごく見えにくい部分の一つ。“ブラックボックス”的だと思います」

本来、学校では、「義務教育は無償」と定められていますが、専門家は、保護者が私費で負担しなければならない“卒対費”は、教育にかかる見えにくい費用、いわゆる“隠れ教育費”だと指摘します。
また、“教員への寄贈”は、法律上“ある問題”があるといいます。

福嶋尚子教育センター准教授
「公立学校の先生は公務員のため法的に問題があります。例えば、一家庭300円ずつ集めて『あの先生にプレゼントを渡そう』と保護者がはじめたとしても、自治体(公立の学校)が、保護者を介して寄付を募って、公の機関として受け取ったということになりますので、これは明確に、地方財政法の第4条の5『割当的寄付金の禁止』に引っかかる行為になります」

公立の学校が、保護者からお金を“割り当てて徴収”することや、
記念品を受け取ることは法律で禁止されているといいます。

しかし、法的に問題にならないケースも。

福嶋尚子教育センター准教授
「保護者が先生に『何か贈り物をしたい』と思い、それに賛同した保護者もみんなが“任意の自発的な気持ち”で集まり、プレゼントすることは法令違反にはなりません」

保護者全員が“自発的な任意による寄付”の場合は、問題なしとなる場合もあるといいます。

保護者の善意で支えられている“卒対”。
専門家は、保護者の経済的な負担のほか、卒対に参加ができない家庭が不公平にならないよう、改めて卒対を考え直す必要があるのではないかと指摘しています。


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