地震発生から“3分”で津波到達…能登半島地震 東京湾や相模湾でも可能性が
13年前、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の超巨大地震によって、大津波が発生(2011年3月11日、東日本大震災)。さらに今年の元日に起きた最大震度7の能登半島地震でも津波が発生しました。
地震発生後の富山湾を捉えた映像では、津波が次々と沿岸に押し寄せているのが確認できます。この地震の震源は石川県能登地方で、震源から離れた富山湾に津波が到達するのは、午後4時20分ごろの予想でした。
しかし、実際に富山で津波の第一波が観測されたのは、地震発生からわずか3分後の午後4時13分でした。なぜ震源に近い場所よりも、富山湾に津波が早く到達したのでしょうか。
津波工学が専門の常葉大学の阿部郁男教授は…
常葉大学副学長 阿部郁男教授
「海底地すべりが津波を発生させたと考えられる」
海底地すべりとは、斜面の堆積物が地震の揺れなどによって崩れ落ちる現象です。これによって、津波がおきることがあります。富山湾の沖合の海底では地震の激しい揺れで斜面が崩れたことが確認されています。
この海底地すべりの危険性は富山湾に限らず、東京湾でもおきる可能性があるといいます。阿部教授が作成した、首都直下地震で千葉県が強い揺れに襲われたケースのシミュレーションでは…
常葉大学副学長 阿部郁男教授
「(地震発生から)8分後に、沖に向かって川の堆積物が崩れた時に津波が発生した瞬間」
阿部教授が注目するのは、千葉・木更津市の沿岸です。小櫃川という大きな川が東京湾に向かって注いでいます。
常葉大学副学長 阿部郁男教授
「川が運んできた土砂がたまって、地震のときに、たまったものが沖の深いところに向かって、少し崩れ落ちていく可能性もある」
河口付近の海底にたまった土砂が、地震の揺れで地すべりをおこし、津波が発生するおそれがあるといいます。これによって、海底地すべり発生から海ほたるには約1分、対岸にある羽田空港や川崎市には約10分後に津波が到達する予想です。
さらに、相模湾でも海底地すべりが起きる可能性があるといいます。赤色で示しているのは、相模湾の海底で、比較的、急斜面になっている場所です。ここで海底地すべりがおきると、観光地である江の島や鎌倉にも発生から10分以内に津波が到達するといいます。
常葉大学副学長 阿部郁男教授
「海底地すべりによる津波は、ものすごく狭い範囲でおこりやすい現象。地すべりがおきた場所のすぐそばは、ものすごい被害を受ける可能性があります」
こうした津波を、どのように検知するのでしょうか。重要となるのが津波観測計です。
横浜地方気象台 井上卓次長
「三角形のものが見えるが、こちらから真下に電波を出して、その電波が海面からはね返ってくるまでの時間を使って、海面の高さを測っています」
海底に設置したものなども含めると全国に約400もの観測点があるといいます。
通常とは異なる要因で発生する津波にどう対応しているのでしょうか。
気象庁地震津波監視課 鎌谷紀子課長
「通常の地震でないものによる津波というのは予測も不可能。気象庁は検潮所などの津波の状況を監視していて、津波が到達したとなれば、迅速に津波警報等を発表する」
突如発生する海底地すべりや海底火山の噴火などによる津波を事前に予測することは難しく、注意報や警報を発表できるのは、潮位の変化が観測されてから、つまり、“津波の発生後”となるのです。
気象庁地震津波監視課 鎌谷紀子課長
「津波警報などを見聞きした場合、素早く海辺から離れる。高いところに避難していただきたい」
「現状必要なところに観測点が設置されていると考えていますが、令和6年能登半島地震の経験をふまえて、気象庁においてもどのような観測体制が必要か、改めて検討する」
全国どこでもおきうる、通常とは異なる津波。私たちはその存在を知って備えることが大切です。