愛子さま初単独公務で「シュッと来られます」 見せられた古典への造詣と“飾らない”お人柄
天皇皇后両陛下の長女・愛子さまは、5月11日、東京・千代田区の国立公文書館で特別展「夢見る光源氏ー平安文学ナナメ読み!ー」を鑑賞されました。愛子さまにとって、初めてのお一人での公務。
案内した調査員が愛子さまの飾らないお人柄と古典文学の造詣の深さについて語ってくれました。
およそ1時間、愛子さまを案内した国立公文書館・星瑞穂調査員は、愛子さまの印象について「大変気さくで飾らないお人柄」と語りました。
鑑賞を終えて帰る際、館長が「またおいでください」と伝えたところ、「はい。近くですので、シュッと来られます」と、手でジェスチャーを交えて答えられたといいます。
国立公文書館は皇居の道を挟んだ目の前にあり、出勤などで愛子さまが使われている門のすぐ近く。「シュッとおっしゃったのが大変おかわいらしくて、私は失礼ながら笑ってしまいまして」という星さん。「笑顔でお応えいただきました」と顔をほころばせました。
この企画展は「夢」を切り口にして平安文学の資料などを展示したものです。星さんは「枕草子」の「うれしきもの」という章の「夢」の部分を紹介しました。
それは、恐ろしい夢を見ても、誰かから悪いことが起こるわけではないと言ってもらえるとうれしいという内容。愛子さまは「夢占いは現代でもありますよね」と切り出し、「例えば人が死ぬ夢や自分が死ぬ夢を見たときには、かえって良いことが起こるということもありますよね」と話されたといいます。
「そういった一般の方が気にするようなこともご存じなんだなと思わず笑ってしまいました。失礼なことなんですけれども、宮さま(愛子さま)も笑顔になっておいででした」と振り返りました。
■愛子さまの知識は「修士大学院生以上」
気さくなお人柄の一方、星さんは、愛子さまの専門的な質問にどきりとしたそうです。
最初に案内したのは、平安文学「源氏物語」の江戸時代の注釈書「窺原抄(きげんしょう)」。この時、愛子さまは、「湖月抄(こげつしょう)との関わりは?」と質問されました。「湖月抄(こげつしょう)」は広く流布した江戸時代の注釈書。
一方、展示してあった「窺原抄(きげんしょう)」は、国立公文書館と東北大学にしかない、珍しい注釈書でした。愛子さまはさらに「注釈書としての論拠がしっかりしているのか」、「どれくらい年数を掛けて作られたのか」、などと次々と質問をされていました。
星さんは「源氏(物語)の注釈書で、江戸時代で湖月抄(こげつしょう)がぱっと出てくるというのは、やはり大変勉強されている方だなという印象を受けました」と語ります。
愛子さまの知識の深さについては、「学部4年生でご卒業されて、ご就職されたと伺っておりますけれども、修士大学院生以上の知識があるのではないかなと拝察いたしました」と感心しきりの様子でした。
愛子さまが「私、この場面は大変思い入れがあるんです」と語られた場面があったといいます。星さんが平安時代の歴史物語「栄花物語」の展示で、藤原隆家が花山法皇に矢を放って襲った「長徳の変」の場面を紹介した際のやりとりでした。
どういうことなのか、星さんが尋ねると、愛子さまは、「高校のレポートで「枕草子」に登場する「翁丸(おきなまろ)」という犬を取り上げた際に、背景に「長徳の変」があるのではないかと、そういった内容でレポートを書いた」と話されたといいます。
愛子さまは高校の卒業レポートで、「源氏物語」や「枕草子」など古典文学を題材にして猫や犬と人との関わりについてまとめられました。「平安時代の猫と犬一文学作品を通して一」という題で、400字詰め原稿用紙30枚以上という学校の基準の倍近い分量だったといいます。
宮中で飼われていて追放された様子が描かれた犬「翁丸」と権力争いとの関わり。高校生でこのようなレポートをまとめられたことについて、星さんは「大変難しいレポートではなかったのかなと思います」と述べていました。
また、愛子さまは、「古今和歌集」の保存状態が良いことや、写本と木製の活字を組んで作った「古活字版」にも関心を寄せられていたということです。
愛子さまは、「『枕草子』のすごいところは、現代の我々でもわかるようなことがみずみずしく描かれている点ですね」という星さんの話に「だから、1000年残るのでしょうね」と愛着を見せながらうなずかれていたといいます。
星さんはこの日の愛子さまの鑑賞について、「私の方も大変勉強になりました」と話します。「私も好きでこの研究の世界に入りましたので、熱心に聞いていただけると本当にうれしいことでして、何か恐れ多いことなんですが、二人で大変有意義な時間を過ごさせていただいたのが、本当に光栄に思っております」と振り返りました。