【漁師歴69年】たった一人で海に出る89歳の現役漁師 若い漁師たちとの交流が生きがいに 三重県・紀北町
三重県紀北町の長島港に、今でも一人で漁に出る現役最年長の漁師がいます。長井義郎さん、御年なんと89歳! 漁師歴69年の大ベテランです。一体どんな方なのでしょうか。そして、長井さんが今でも漁を続ける理由とは…?
船の操縦から漁まですべて一人でこなす89歳のベテラン漁師
午後3時ごろ、長井さんの元を訪れると、ちょうど漁に出るところでした。同行させてもらったのですが、船に乗っているのは長井さん一人だけ。船の操縦から漁まですべて一人でこなしているといいます。長井さんの漁は、魚が寝ている昼の間に海に網を仕掛け、日が落ちて暗くなり活発に動き出して網に引っかかった魚を取る方法。漁場に到着すると全長700メートルもある網を手際よく仕掛けていきます。はたして、魚は取れるのでしょうか。
過酷な遠洋漁業生活を経て結婚 今では料理もお手の物!
20歳で漁師になった長井さん。若いころは遠洋漁業でマグロ漁をしており、グアムの手前にあるアグリハン島まで漁に出ていたと言います。一度海に出たらしばらく帰れない遠洋漁業の生活は大変なことも多く、水の備蓄が足りなくなったときは、スコールが来ると裸になって水浴びをした経験も。
そんな生活を経て26歳でますよさんと結婚。子供が巣立った後は夫婦で過ごしていましたが、7年前にますよさんが他界。それからは一人で暮らしているので、今では家事もすべて自分でこなしています。
この日も、漁を終えて午後4時過ぎに帰宅すると、食事の準備を開始したのですが、驚くのは長井さんの食べる量。なんと3合半のご飯を炊いていました。仕事で体を動かすとお腹がすくので、一人で3合半を平らげてしまうそうです。たくさん動いてたくさん食べるのも、長井さんの元気の秘訣なのでしょうか。
「まだ負けるか!」 漁師仲間たちとの交流が若さと元気の秘訣
日付が変わって午前3時半。まだ真っ暗な中、船で沖に出る長井さん。海の状態は波もなく落ち着いています。漁場で網を引き上げると、次々と魚が引き上げられていきます。カワハギや天然物のマダイも取れました。漁の成果は「まあ、普通やな」としながらも、長井さんも嬉しそうな笑顔を浮かべます。港に戻って網をほどきながらかかった魚を取り出すと、かごの中は今日取れた魚でいっぱいに。市場での売り上げは2500円ほどとちょっと寂しい金額に思えましたが、長井さんは「こんなもんや!」と笑っていました。
この日、長井さんが取ったマダイは、地元の料理店で立派な料理になりました。カマの煮つけにアラを使ったお味噌汁、お刺身の付いたタイづくしのランチ定食。食べたお客さんからも「プリプリで甘くて、いくらでも食べられますね」と大好評です。こちらの料理店では「80過ぎた現役のおじいちゃん漁師が釣ってきた魚だよ」と言ってお客さんに出すこともあるのですが、誰もがその年齢に驚くそうです。
漁師仲間たちからも「長老やしな。元気ある」「最年長やでな。先生かな」と慕われている長井さん。なぜ、何歳になっても元気で漁に出続けられるのでしょうか。その秘訣を聞いてみると…。
長井さん:
「浜に出ていろんなこと言ってな、喋っているのが若い秘訣かもしれないな。(若い人に負けたくないという)そういう気持ちもあるな。そういう気持ちがなかったらアカンしな。やっぱりまだ負けるかーって気持ちで沖に行かないといけないな」
いつ辞めるかわからないと言いながらも、まだまだ長井さんの最年長漁師の記録更新は続いていきそうです。