手品師が持つ“もう1つの顔”… 激動の人生も「笑い」貫く
名古屋を拠点に活動する手品師・小宮拓郎さん(49)。舞台に立つときは「白血球」という名前で活動しています。実は、小宮さんには手品師のほかに意外な“別の顔”があるのです…!
「自分の芸をいかせる場所が、ここにある」 不遇の芸人時代を経て見つけた居場所
名古屋市千種区のとある部屋で手品を披露する小宮さん。客席を見渡してみると、ほとんどが高齢者です。ここは老人ホーム、しかも、小宮さんが自ら運営している施設なのです。
いつも明るい小宮さんはみんなの人気者! 入居者からも「もう我が家みたいな感じで思ってるんですけど」「(小宮さんは)きょうだい同様」と、かなり慕われているようです。
それもそのはず、小宮さんは20代の頃、吉本興業に所属して芸人手品師「白血球」として活動していたのです。しかし、30歳になっても売れる気配はなく、住む家を失い公園でテントを張って寝たこともあったといいます。30歳の頃には名古屋に戻り、様々な職を転々としていました。
そんな時、転機が訪れます。
スマイルケア名古屋 小宮拓郎理事長:
「祖母が、僕が40歳の時に認知症になったんですよ。グループホームに入ったときに、僕の母が行っても、もう誰か分からないような状態だったんだけど、僕が行くと『ああ拓郎、手品見せて手品見せて』って言うもんだから嬉しくて」
それをきっかけに、他の利用者の前でも手品を披露するように。すると、施設の職員から「こんなに利用者さんが笑ってるの初めて見ました」という言葉が。小宮さんは、その一言が衝撃的だったと語ります。
自分の芸をいかせる場所が、ここにあるのではないか。そう考え、自らも施設の運営を始めたのです。
「笑顔の力で老後を元気に」 300以上の施設で手品ショーを開催
定期的に開催している小宮さんの手品ショーは、利用者たちが楽しみにしているイベントの一つとなっています。
さらに、小宮さんは自分の施設だけでなく、他の高齢者施設や児童養護施設などでもボランティアで手品ショーを開催しているのです。今まで訪ねた施設の数は300以上といいます。
今年の元日に起きた能登半島地震でも、名古屋市からの派遣で被災地に向かい、手品を披露しました。小宮さんが手品を披露すると、客席に笑顔が溢れます。手品を見た人からは「スカッとしますね。本当に心のよりどころ。暗い感じがパッと明るく切り替わったって感じで」という声が聞かれました。
スマイルケア名古屋 小宮拓郎理事長:
「“笑顔の力で老後を元気に”っていう僕の中の合言葉があるんですけど、収入も必要なので、ちゃんと仕事もしながら、その分は全て笑いの足りない場所、少ない場所に還元していくって活動を続けていきたいですね」
小宮さんは4月まで定期的に石川へ向かい、被災者との交流を続ける予定です。