【専門家解説】命を守るためできること 能登半島地震1か月…巨大地震への影響は
■戦後の内陸地震で“最大” 従来の枠にとらわれない対応を
藤井貴彦キャスター
「地震から2月1日で1か月となりますが、生活再建の状況や復旧の状況をどうみていますか」
東京大学大学院 松尾一郎客員教授
「今回の地震は、マグニチュード7.6と言われています。実は、戦後に内陸で起きた地震の中でも最大の地震だったんです」
藤井キャスター
「東日本大震災は?」
松尾客員教授
「震源が海でした。海溝型地震です。阪神・淡路大震災は内陸です。ですけど、マグニチュード7.3。今回は7.6だったということで、一番大きかったということです」
「地震による地殻変動というのは、150kmを超えています。余震域を見ると、それだけ割れているということです。能登半島でさえも、どんな地域でも、これだけの地震を経験するともたないんです」
「道路網は被災するし、特に海岸に面しているし、地盤は弱い。やはり、災害の復旧・復興を非常に難しくしていると思います。ですけど、地域では断水が長期化していることもあるので、復旧を急ぎたいと思います」
松尾客員教授
「政府は被災者の生活と生業支援のためのパッケージというのを発表しました。その中で一番重要なのは、被災者が被災した自宅を解体するのは無償ですということです。生活再建支援については、国が最大300万円支給しますと言っているんです」
松尾客員教授
「ところが、石川県全体で見ると高齢化率は大体3割のところ、能登半島、被災地域では5割に近い。65歳以上の人が半数以上なんです。要するに高齢者・高齢者世帯に300万円で生活再建してくれというのは、絶対無理だと思うんです。自宅を建て替えるだけでも、1000万、2000万円かかる世界ですから」
「そういう意味では、この生活再建支援というのは、従来の枠にとらわれず柔軟な対応、実情に即して被災者に寄り添った国と県の対応。被災者がもう一度頑張ってみよう(と思える)そういう復興を目指してほしいと思います」
藤井キャスター
「そして、松尾客員教授が心配しているというのが、『南海トラフ地震』などの巨大地震への影響ということですが、先ほどの話にあった地殻変動が気になるということですか?」
松尾客員教授
「国土地理院が公表したデータでは、今回の能登半島の地殻変動で地盤が北西方向、海側に最大2m近く動いているんです。一番揺れているところで2mから1.3mです。これが、内陸含めて少し動き方が緩くなりますが、全体に『ひずみ』を与えています」
「ひずみは周辺含めてどんどん広がっていきますから、いずれは内陸のさらなる地震にもつながるだろうし、私たちが一番懸念する南海トラフ巨大地震にも関連してくるのかなと非常に危機感を持っています。次のステージに向かっているということです」
藤井キャスター
「改めて、南海トラフ地震の想定エリアになりますが、震源域は広い範囲です」
松尾客員教授
「広いんです。(想定されるのは)マグニチュード9です。今回の能登半島地震と同じ深さ10~20kmの浅いところから割れ始めるんです。正に私たちが住んでる地面の下で割れ始める。相当に揺れの大きさと津波にも影響があります。南海トラフが割れた時には、伊豆半島、紀伊半島、室戸岬含めて、今回能登半島で起こったことが起こりうると私は考えています」
松尾客員教授
「それに対して、命をどう守るのかということが重要になると思います」
藤井キャスター
「どう守るのがいいと、お考えですか?」
松尾客員教授
「災害にはそれぞれ役割があるんです。個人ができること、国や自治体が支援できること。個人でできることは、まずは、家具の固定を進めてください。今からでもできることです。これは絶対に急いでやっていただきたい」
「加えて自宅の耐震化。リビング、寝室含めてひと部屋でもいいから揺れに強い部屋を作っていく。これについては自治体の助成もあります。そういったものを活用して、より強い家にしていく」
「水や非常食の備蓄。それと避難場所の確認。もっと重要なことは寝袋を用意しておくことです。自宅に電気が通らなくなって暖房が使えなくても寝袋に入れば何とか温まることができます。避難所でも助かります」
「国や自治体の支援について考えた時に、私は『命を守る路』が必要だと思っています」
藤井キャスター
「今回、一番必要なのは道路でした」
松尾客員教授
「道路はやはり強化しないといけないんですよ。被災したとしても、数日、1週間で復旧できるようにしてもらいたいです。空路もヘリポート、ドローンも活用した物資輸送の体制を作ります。上下水道の一体化といったことが必要だと思います」