“痩せたい…”中学生がリカちゃん人形と「痩せ」について考える
中学生の「もっと痩せたい」という声を受けて、慶応大SFC研究所健康情報コンソーシアムの研究員などが特別授業を行いました。
3月7日、東京・調布市にある私立桐朋女子中学校で、中学1年生160人を対象に「痩せ」について、特別授業が行われました。中学生になる頃には、女性は初潮を迎えます。それとともに丸みをおびた女性らしいカラダへと変化しますが、同時に気になるのが「ダイエット」。健康的なカラダとは何か、リカちゃん人形と共に中学生が考えました。
■リカちゃんは「11歳女子として理想的」 ミロのビーナスの体脂肪率は?
特別授業を行ったのは、慶応大学SFC研究所上席所員の本田由佳さんと株式会社タニタ企画開発部主席研究員の西澤美幸さんです。2人は「痩せ」について研究を続けてきた専門家です。
「痩せたい」という声に対して、講師の2人は「体組成」をみていくことが重要だと話しました。「体組成」とは、簡単にいうと骨や筋肉などカラダの中身のことです。授業では、タニタが持っているビッグデータをもとに、身長、体重、ウエストの太さから「体組成」が推計されました。
まず、おもちゃの「リカちゃん」の体組成。リカちゃんは、身長142㎝、体重34㎏、11歳の女の子です。リカちゃんは痩せているのか、太っているのか。リカちゃんの体組成を推計してみると、体脂肪率は19.8%、筋肉量は25㎏。11歳の女の子の平均は体脂肪率21.0%、筋肉量は25.9㎏。西澤さんは「平均のど真ん中。11歳女子として理想的で良いスタイルだということが分かります」と説明しました。
次に、ミロのビーナス。身長204㎝、体重100.3㎏で体脂肪率は27.8%。肥満ではなかったということです。ダビデ像は、身長434㎝、体重502.9㎏で体脂肪率は10.5%。西澤さん「筋肉ムキムキですが、男性としてはちょうどいいくらい」。
■「脂肪は敵じゃない」思春期で脂肪量は自然と増える
ダイエットの敵だと思われがちなのが「脂肪」。しかし、脂肪が増えるのは思春期では自然なことだといいます。タニタ研究所のデータでは、7歳から17歳までに男子は約4㎏、女子は約10㎏脂肪が増えます。西澤さんは「1年間で2㎏くらいは脂肪が増えます。脂肪が増えるのは正常のこと。脂肪は敵じゃありません。少なければ少ないほどいいのではありません。脂肪は体温を保つなどカラダを守るために必要なもの」だと話しました。
また、脂肪と筋肉の見た目の違いについても説明がありました。西澤さん「同じ重さの脂肪と筋肉を比べると、脂肪を1とした場合、筋肉は0.8。筋肉は重くて小さい組織です」。筋肉が多いと、引き締まってみえ「体重が少ない=痩せている」のではないと説明がありました。また、太りにくい人については、「代謝がよい人」と説明があり、筋肉量が多いと、消費エネルギーが多く、カラダに脂肪をためにくいということです。
■「痩せすぎで生理が止まる」適切な体重とは?
授業の中では、初潮を迎える体重についてクイズが行われました(1)35~37㎏(2)40~43㎏(3)45~48㎏。それぞれ(1)は2割、(2)は7割、(3)は1割の人が手を挙げました。正解は(2)。本田さんは「40~43㎏、体脂肪率は20~22%になると生理が来るといわれていて、体重と生理は関係があることを覚えておいていただきたいと思います」と話しました。また自らの経験とともに「痩せすぎ」の危険性について語りました。
本田さん
「中高生の時、新体操をしていて、その時、体脂肪率が14%か15%でした。なので高校3年間は生理がありませんでした。体脂肪率が17%を切ると、無月経(=生理がこなくなる)になって、疲労骨折などもしやすくなるというデータもあります。私もすごくケガをしていました。なので、ある程度体重がないと、運動も出来ないし、女性としての機能もうまく働きません。きれいなカラダを作れなくなってしまうのである程度、脂肪は必要です」
■成長曲線をつけてみよう!
成長期のダイエット、食事の量が減るのはよくないとして、本田さんは「まず、できることとしては、成長曲線をチェックしてみましょう」と呼びかけました。成長曲線は、身長、体重、年齢をグラフにすることで分かります。赤ちゃんの時は、母子手帳に付けてもらっていた人も多いかもしれません。
■「成長を楽しんで」痩せの専門家から中学生にメッセージ
最後に、西澤さんから中学生にメッセージがありました。
西澤さん
「私もみなさんくらいの時を思い返すと、自分のカラダについて不安でいっぱいでしたし、好きではありませんでした。
もっときれいになりたいなと。ソフトボールのキャッチャーをしていたので、ソフトボールももっと強くなりたかったんですが、もっと美しい人になりたいなと思っていました。だから痩せたいという気持ちもすごくよく分かります」
「今のみなさんはすごく輝いています。この輝きを大事にして、あまり小さいことは気にせず、「自分は成長しているんだな」と実感しながら変化を楽しんでください。悩んだりすることもあると思いますが、困ったら友達や家族、信頼できる人に相談してください。自信を持ってポジティブに無理をすることなく、健康的に過ごしてほしいなと思います」
<本田由佳(ほんだゆか)>慶応大学大学院政策・メディア研究科特任准教授/博士(医学)
元新体操神奈川県代表インターハイ選手。一児(23歳)の母。自ら経験した極端なダイエット、妊娠・出産・子育てがきっかけで健康科学者となった。2012年まで健康機器メーカー研究員として、女性や子ども・アスリートの体組成の研究、睡眠計の開発をした。現在は、大学を拠点に、ICTを用いた小・中学生向け健康スキル向上プログラム等の開発・研究をしている。
<西澤美幸(にしざわみゆき)>株式会社タニタ 企画開発部主席研究員 栄養士
学生時代よりタニタの体脂肪計開発プロジェクトチームに参加、世界初の乗るだけではかれる体脂肪計や体組成計、活動量計などの回帰式(推定式)や判定アルゴリズムを開発した。栄養士の資格を持ち、技術開発研究者と栄養士の二つの視点から健康とからだに関するセミナー講師も担当している。