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5類に見直しへ…動き出した“新型コロナ出口戦略”新たなリスクと課題は

2022年12月31日 12:00
5類に見直しへ…動き出した“新型コロナ出口戦略”新たなリスクと課題は
「厚労省専門家会議 2022年12月14日」

2023年、政府は春ごろをめどに、新型コロナウイルスをインフルエンザと同じ「5類」感染症にすることを模索している。世界が新型コロナとの共存に進む中、日本の対策は変われるのか?専門家が示した「インフルエンザとはあまりに違う」リスクと、見直しの見解とは。
(社会部 岸倫子)

■「インフルエンザとは大きく異なる」新型コロナ最新リスク評価

2022年12月14日、厚生労働省の専門家会議で示された資料には、新型コロナウイルスの厳しいリスク評価が示された。

「年に数回の流行を繰り返し、そのたびに多くの死亡者を生むなど、季節性インフルエンザとは大きく異なる特徴を持った感染症である」

12ぺージに渡る最新の科学的な分析結果には、いまなお新型コロナウイルスには解明できない点が多くあることが記された。

このリスク評価は、政府の要請で出されたものだ。加藤厚生労働大臣は、新型コロナウイルスの感染症の位置づけを見直す検討を始めるにあたり「専門家の意見も聞きながら最新のエビデンス(科学的知見)に基づき、総合的に議論を進めていきたい」として、専門家のリスク評価を求めた。

そもそも、感染症法の類型は、危険度の高い順に、以下の1~5類型と新型インフルエンザ等感染症などに分かれている。

新型コロナウイルスが分類される「新型インフルエンザ等感染症」は「国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」と定められており、感染者の全数把握を行うほか、感染者への入院勧告や行動制限などの強い措置が可能だが、そのかわり医療費や薬は公費でまかなわれ、個人の負担はない。

一方で、見直しが検討されている「5類」はどうか。季節性インフルエンザがこの分類になるが、入院勧告や行動制限などの強い措置はなく、全数把握もない。新型コロナのような発熱外来など限られた外来だけではなく、広く一般の医療機関で診療が可能だが、ほかの病気同様、医療費や薬代の一部を患者も負担する。

いまの新型コロナウイルスで、そうした対応が可能かどうか。

専門家は、「病原性」「感染力」「変異の可能性」「医療体制への影響」など様々な観点から、リスク評価を試みた。

■「感染力」は頭うち「伝播力」は増大

前述のように、専門家は、新型コロナは「季節性インフルエンザとは大きく異なる特徴がある」と指摘する。

過去に出現したすべての「新型インフルエンザ」は、2年程度で重症度が大きく低下して流行規模が縮小し、季節性インフルエンザに移行していったことと比べて、新型コロナがたどってきた経緯が、あまりに違うためだ。

新型コロナは、オミクロン株の出現により感染者数が急増し、2022年夏の第7波では、1日で約26万人と過去最多を記録した。感染の規模は流行ごとにむしろ拡大しており、しかも、いまだに明確な季節性がないと専門家は指摘する。

感染者が増加する要因について、専門家が注目するのは「感染力」ではなく「伝播力」だ。

厚労省の専門家会議座長で国立感染症研究所の脇田所長は「オミクロン株の感染力はほぼ頭打ちになったというのが専門家の一致した見解だ」という。しかし、オミクロン株が「BA.2」から「BA.5」へ置き換わり、新たに「BQ.1」や「XBB」などの系統が出現する度に、ワクチンなどの免疫を逃れる力がより強まっているとみられ、感染が広がりやすくなる「伝播性」が大きくなっているというのだ。

■肺炎は減少も、心臓など循環器系の死亡リスクが増加?

さらに、専門家が注目するのは、死亡者の数だ。2021年4月以降亡くなった人が例年よりどのくらい多かったかを示す「超過死亡」の推計では、新型コロナの流行時期にあわせて超過死亡が増加し、特に第6波と第7波の時期は、大幅に増加したと指摘している。

新型コロナに関連する死亡や、医療機関の逼迫による影響などが考えられるが、1つ注目する死因の増加があるという。

それは、心臓など循環器系の疾患による死亡だ。新型コロナの死因は、当初、ウイルス性肺炎のリスクが大きく指摘されてきた。しかし現在では、抗ウイルス薬が普及した影響もあり、呼吸器系の合併症で死亡する感染者は減少している。

一方で、最近発表されたイギリスの研究では、新型コロナ感染後の心血管系の合併症が、入院リスクだけでなく死亡リスクにも関与していることが示されたという。

国内でも、2022年1月~7月の循環器系の疾患による死亡数は1万3015人で、前年同時期と比べて6.23%増加。新型コロナとの関連がどの程度あるかは明らかになっていないが、京都大学の西浦博教授は、「超過死亡の規模は、インフルエンザとは比較にならない状況」と指摘する。

■通常医療でコロナ対応は可能か

もう1つ、5類への見直しで懸念されるのが、医療提供体制への影響だ。オミクロン株で重症度は下がったとはいえ、感染者が増えれば、医療機関が逼迫するおそれは今後も続く。5類に位置づけが変われば、医療費の公的な支援が縮小されたり、臨時の医療施設や宿泊療養施設が廃止される可能性もある。

一方で、季節性インフルエンザのように、これまでコロナ対応をしていなかった医療機関でも受診できるようになる可能性もあり、通常の診療体制の中でどの程度対応できるかが、焦点だ。

院内の感染対策などが必要で、対応できる病院や診療所がすぐに広がるかは見通せない。

また、現在は国が買い上げ、無料で処方されている高額な新型コロナ治療薬も、5類になれば、患者が一部負担する可能性がある。

ワクチン接種も、現在は全額公費負担の「特例臨時接種」だが、5類になれば、季節性インフルエンザと同様、全額自己負担に切り替わる可能性もある。(インフルエンザワクチンは65歳以上の人などについては自治体が費用負担する場合も)

■なぜいま、類型を見直すのか?専門家は見解案

政府は、専門家や自治体などの声も聞きながら、2023年初頭から本格的な議論を始め、春ごろをめどに、見直しを目指す。

専門家は、最新の見解案で、「5類」になった場合の影響を具体的に提言している。

例えば、感染が拡大したときに行政などによる入院調整が行われないことや、治療費が無料ではなくなることで、感染者が検査や治療を受けづらくなることへの懸念が示され、一方で、濃厚接触者への法律に基づく行動制限は、すでに事実上行われておらず影響は少ないと指摘した。

感染拡大が続く“第8波”の最中に始まった議論について、ある厚労省の幹部は「まずは類型が変わればこう変わるという頭の体操をして議論を深め、基盤作りをしている」と話す。

今後の感染状況次第では、類型を変えるタイミングは4月以降にずれる可能性もある。また、すべての措置を「5類」に切り替えるのではなく、医療機関への支援やワクチンの公費負担などを一定期間継続しながら、状況をみて移行していく案も検討されるとみられる。

4年目に突入する新型コロナとの戦いの中、動き出した出口戦略は正念場を迎える。