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東京・有栖川宮記念公園の巨大ナマズ 引っ越し間際に死す 人間の“エゴ”に翻弄された生涯

2023年3月9日 20:01
東京・有栖川宮記念公園の巨大ナマズ 引っ越し間際に死す 人間の“エゴ”に翻弄された生涯
発見された時のナマズ

およそ1か月前、東京港区の有栖川宮記念公園の池で発見された巨大なナマズ。京都の水族館に引っ越す当日の朝、死んでいるのが確認されました。

■引っ越し前日まで活発に…

2月4日、東京都港区にある有栖川宮記念公園にある池の生態調査の時に発見された、体長1メートルを大きく上回るヨーロッパオオナマズ。3月9日に京都の花園教会水族館に引っ越す予定だったまさにその日の朝、死んでいるのが確認されました。

池から発見されたのち、衰弱していたことから港区の職員や生態調査の専門家ら、そして京都の水族館の職員らが何度も東京に足を運び、毎日誰かしらが様子を確認して懸命な処置が施されていました。引っ越し前日の8日も生きているのは確認されていたということで、その日の夜から朝にかけて死んだものとみられます。

引っ越しを4日後に控えた3月5日、水槽のポンプに当たったとみられる傷が左横腹に確認されていましたが、その後、気温と水温が上昇したため、以前より動きが活発になっていたとのこと。朝、職員がプールにかぶせていたビニールをはがすと、黒く濁った水に、動かないナマズが浮いていました。そして、5日には体の左側だけにあった傷が右側にもありました。

■元気な姿を見送りたかった

発見当初から、ナマズを見守っていた自然環境調査の専門家・仁井雄治さんは「3月4日くらいから盛んに動き出した。ずっと面倒みてきたので情は移りますよね。元気で京都に行ってもらいたいと思っていた」と話しました。

今回、専門家らによるDNA調査で「ヨーロッパオオナマズ」と判明したナマズ。特定外来生物に指定されています。

「特定外来種ではありますが、このナマズの場合繁殖の可能性がきわめて少ないので、そのまま池に放す事も可能でした。戻す方がナマズには幸せだったのかもしれませんが、それも結果論からで、もし戻していても批判は大きかったと思います。そもそもは、この池にも誰かの手によって放された事から始まったわけです。」と水族館の篠澤俊一郎さん。

引っ越しの為に機材や専用のタンクを車に積んで京都から前日入りしていました。水族館で普段ガイドのボランティアをしている小学4年生の息子らも一緒に手伝いにきていて、「しょんぼりです」とナマズのプールの水ぬきなどを手伝いました。

この巨大ナマズ、発見当初は130センチほどと推定されていましたが、死んだあとに測定したところ、体長は144㎝でした。

■ナマズは東大へ

ナマズはプールから出して冷凍保存され、東京大学が引き取り、解剖してこの池での生活期間などが分かる事が期待されています。

■人間のエゴで

ペットとしての飼育下ではなり得ない大きさで、えさがありのびのびと生活できる環境だったからあそこまで大きくなったのだ、と専門家は言います。

しかし、池から発見されて「特定外来種」と分かった以上、池には戻す事が難しくなりました。慣れない環境で隔離され、衰弱が進んだとみられています。懸命な救命処置は叶わず息を引き取ったナマズは、この池には本来居ない遠く離れたヨーロッパ原産。誰かの手によってこの池に放されてしまい、最後まで人間の都合に翻弄されてしまった生涯でしたが、最後の1か月だけは彼(彼女?)の幸せを願う人たちの世話になったことは皮肉と言うしかないのでしょうか。