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【特集】5年ぶり「伝統工芸士」誕生 越前打刃物・北村拓己さん(36) 刃渡り1メートル超の包丁づくり 親方から受け継ぐ職人技

2025年3月2日 20:09
【特集】5年ぶり「伝統工芸士」誕生 越前打刃物・北村拓己さん(36) 刃渡り1メートル超の包丁づくり 親方から受け継ぐ職人技

越前打刃物の産地で、刃渡り1メートルを超える包丁づくりの技を受け継ぐ職人が「伝統工芸士」に認定されました。産地からの認定は5年ぶり。子育てにも奮闘しながら、刃物づくりに打ち込む男性の挑戦に密着しました。

越前市内の包丁製造メーカーに勤務する北村拓己さん(36)。高校を卒業してすぐメーカーに就職した北村さんは、5年ほど前から伝統工芸士の清水正治さん(83)に弟子入りしています。

■清水さんによる指導風景
「もっとハナを叩かな。そんなものでは延びない。もっと叩かないと」

普段はステンレス製包丁の鍛造やプレスを手掛ける北村さん。

■北村拓己さん
「やりたいものづくりは鍛冶屋の火造り。鍛造で包丁を作りたい」

全国でも珍しい刃渡り1メートルを超えるマグロ切包丁を製作している清水さんから、独自の技術を受け継ごうと奮闘しています。

■北村拓己さん
「怒られるのはもちろん嫌ですよ。打ち刃物は僕はやりたいんです」

■清水正治さん
「来年は伝統工芸士の試験があると思う」
「受けられるのであればぜひ受けたい」

伝統工芸士は、国指定の伝統的工芸品の産地で12年以上の経験を積み、実技や面接などの試験をクリアしたスペシャリスト。産地のリーダーとして、後継者育成の役割も期待されます。

清水さんも平成4年に伝統工芸士の認定を受け、今では産地に18人いる伝統工芸士の中でも最年長となっています。

■清水正治さん
「産地発展のために骨身削ってやらないと何事も」

■北村拓己さん
「生きがいみたいなものでもあるけど、これだけはやり遂げたい。極めたいと思っている」

2児のパパとして子育てにも奮闘する北村さん。子育てと両立しながら刃物づくりに打ち込み、いよいよ試験当日を迎えました。

■北村拓己さん
「今までやってきているので、できることやるだけ。ある程度のところまできているので、見せるだけ」
■清水正治さん
「大丈夫や。もうばっちりや。誰もあれだけできる者はいない」

実技試験は、清水さんの作業場で鉄と鋼を接合する「沸かし付け」で、規定の包丁をつくり上げました。

■北村拓己さん
「メールで結果が出まして、合格しました」

家族の後押しも受けて見事合格を果たした北村さん。清水さんにも報告に向かいました。

■北村拓己さん
「おかげさまで無事に受かりました」
■清水正治さん
「これからが大変じゃ。始まったところで、まだ今から」

最近では、国内外でステンレスの刃物の需要が伸びる一方、700年の歴史がある昔ながらの包丁技術の伝承が課題となっています。

■北村拓己さん
「越前打刃物は世界中でいい評価を得ているけど、作る側としては海外に人気の出そうな色・形にしているので、どんどん変わっている。伝統的な技術で包丁を作れる職人が減ってるので、何とか技術を残したい。終わらせたらダメだと思っている」

なお、越前打刃物の産地から伝統工芸士に合格したのは5年ぶりで、伝統の技と熱い志を受け継いだ北村さんの活躍が期待されます。

最終更新日:2025年3月3日 9:36
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