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県外企業が直面“見えない風評被害”処理水放出からまもなく1年・福島

2024年8月22日 19:00
県外企業が直面“見えない風評被害”処理水放出からまもなく1年・福島

福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まって24日で1年。
ゴジてれChu!は、漁業の未来や放出がもたらした影響についてシリーズでお伝えしてきました。

処理水の放出によって県外ではその影響を色濃く受けているところがあります。
とくに、その実態が表面化しづらい「見えない風評被害」に直面している企業があります。

2023年、福島第一原発で始まった処理水の海への放出。
漁業関係者らを中心に当初 懸念されていた風評被害は目立って確認されず。それどころか…
福島の水産物を応援しようという動きが瞬く間に広がり、全国各地で福島自慢の「常磐もの」が知れ渡りました。ただ…

■中国外務省 報道官
「海は日本のごみ箱ではないし 太平洋は日本の下水道ではない」

処理水の海洋放出に猛反発する中国は、日本の水産物の輸入禁止措置に踏み切り。
中国との結びつきが強い県外の漁業には暗い影を落としました。

あれから1年。

県外の漁業が置かれている現状を知ろうと、取材したのは宮城県石巻市。
世界三大漁場とも呼ばれる「三陸・金華山沖」を抱え、たくさんの魚介類がここで水揚げされます。

今の状況はというと…。

■漁師は
「思った以上に風評被害は感じないという形です」
■漁港は
「(影響を受けたという話は)うちの周りの人では無いですね、今のところは」

放出による風評の影響は落ち着きつつあるといいます。ところが…

■漁師は
「ただやっぱり業種によっては被害を感じられてるところもあるだろうし」
海に携わる業種によっては、いまも影響を受けているところがあるというのです。
向かったのは市内で水産加工を営む企業「ヤマナカ」。

■株式会社ヤマナカ千葉 賢也 代表取締役社長
「宮城県産、地元のホタテを冷凍凍結用製品として今加工しているところです。我々の加工の屋台骨を支える製品になっております」

石巻や気仙沼で獲れたホタテを主力に自慢の水産物を海外に輸出しています。
もともと中国には輸出していなかった「ヤマナカ」ですが、今回の輸入禁止措置のあおりをうけ、予想だにしない打撃を受けたのです。

■株式会社ヤマナカ千葉 賢也 代表取締役社長
「簡単に言ってしまえば相場が下がってですね、その影響を大きく受けたということで」

禁輸措置をめぐっては、主要な輸出品目だった「ホタテ」がその影響を色濃くうけ、北海道など一大産地のホタテが行き場を失いました。
そのため、国などは、中国以外の国や国内でのホタテの消費を呼び起こそうとあの手この手の支援策を展開。

結果として、ホタテを扱う漁業関係者の助けになったことは事実ですが、その反動で、市場での価格は下落。
「ヤマナカ」によりますと相場が3割近く下がったといいます。
それに引きずられるように「ヤマナカ」も取引価格を下げざるを得なくなり、売り上げは大きく減少しました。

■株式会社ヤマナカ千葉 賢也 代表取締役社長
「我々、加工業者としてこういった相場観の問題から影響が本当に大きくあるので」

こうした影響を受けた漁業者や事業者に対して、東京電力は、具体的な賠償の基準を示しその対応にあたっています。
7月末時点でおよそ180件、320億円ほどの賠償が進んでいるということです。
「ヤマナカ」も賠償を受けたいと、東京電力と話し合いを進めているといいますが…

■株式会社ヤマナカ 千葉 賢也 代表取締役社長
「東京電力さんからの賠償、それが昨年度からお話ありましたが未だに進んでいないというところが現状ですので。なぜ進まないのか、どのようにしたら交渉進められるのかという、そういったきっかけだけでも、まずいただいて」

賠償を受けられるのか?
その判断は、まだ、示されていません。

「ヤマナカ」は処理水の放出をきっかけに直接的ではないにしても、混乱した市場に巻き込まれたのは確か。
それが賠償の対象になるのか、ならないのか。中小企業にとって、その差は死活問題です。

■株式会社ヤマナカ 千葉 賢也 代表取締役社長
「賠償があるないの判断1つで大きく会社のかじ取りが変わってしまうというものがあるので、本当に早期にどのように対応していただけるかっていう姿勢を示していただきたいなっていう風には思ってます」

中国の禁輸措置による複雑な市場の仕組みによって間接的に影響を受けた県外の漁業者関係者たち。
こうした人たちが、支援の輪から取りこぼされないよう、東京電力や国には柔軟な対応が求められています。

    福島中央テレビのニュース