被爆80年「核なき世界へ」 元日に原爆ドームで被爆ピアノの調べ 広島
2025年は被爆から80年となる年です。元日、広島市の原爆ドーム前では原爆の熱線と爆風をうけたピアノを演奏して犠牲者を慰霊するととともに、被爆の記憶を継承することを誓いました。
この演奏を企画したのは広島市のピアノ調律師・矢川光則さん(72)です。矢川さんはこれまで、被爆したピアノを引き取り修復してきました。
それらは「被爆ピアノ」と呼ばれ、矢川さんがトラックで全国各地に運んで演奏会を開き、ピアノ所有者や家族の思い、原爆の悲惨さなどを伝えています。
被爆80年を前に、去年から矢川さんは広島市に207基ある原爆犠牲者の慰霊碑の前で、被爆ピアノを演奏する取り組みを始めました。すでに約40か所で演奏したということです。
元日、矢川さんが2025年最初の演奏場所に選んだのは原爆ドームの慰霊碑前でした。
終戦直前、原爆ドームには木材を統制する会社や内務省の事務所などがあり、多くの職員が犠牲になりました。ドームの周りには犠牲者の慰霊碑や作家、原民喜の詩碑などがあります。
演奏に使われたのは、爆心地から2.6キロ、広島市南区段原山崎町で、熱線と爆風を受けたピアノです。持ち主の女性から矢川さんが譲り受け修復しました。
アメリカ出身のピアニスト、ジェイコブ・コーラーさんが、このピアノで「ふるさと」や「荒城の月」「イマジン」などを、およそ1時間かけて演奏しました。
平和公園を訪れた人は足を止め、およそ80人が被爆ピアノの音色に耳を傾けていました。
演奏後、ジェイコブさんは「戦争や原子爆弾はいらない。そして、心の平和や、家庭内の平和を大切にする気持ちを感じて欲しい」と話しました。
矢川さんは「音楽は世界共通言語。被爆者が高齢化し、語り継ぐ人が減っているが、この被爆ピアノが果たす役割はますます大きくなると思う」と、今後の活動への意欲を語りました。
矢川さんは8月5日まで、広島市内各地の慰霊碑前で演奏を続けるということです。
【2025年1月1日】