災害対策本部長は小学生!? 阿南市の小学校と地元自主防災会が合同防災訓練【徳島】
折りしも前夜・2日にはフィリピンの地震による津波注意報が出され、いきおい訓練はいつも以上に真剣な雰囲気のもと行われましたが、そもそもこの訓練、普通とはちょっと違っていたんです。
「青(グループ)から本部へ」
「こちら本部」
「青の人数12名揃っています」
「12名 了解」
4年ぶりとなった合同防災訓練直前、3年生の教室では。
「この3つのこと、思い出して避難してくださいよ。(はい)」
「訓練・訓練」
この訓練は、南海トラフ巨大地震が発生し、太平洋沿岸に大津波警報が発表されたとの想定で行われ、児童や教職員ら50人を含む約70人が参加しました。
避難を終え運動場に集合すると、福井町自主防災連絡会の大開覚会長は、次のように話しました。
(福井町自主防災連絡会 大開覚会長(61))
「きょうは大変でした。昨夜のサイレンからどうなるかと思ったけど、避難指示は解除になったし、(訓練が)できました」
いつもなら、訓練はここで終わりです。
これまでと違う4年ぶりの訓練 その主役は・・・
この日の訓練はまだ終わらず、ここから訓練の主役は子どもたちになります。
6年生の髙鶴陽生くんが災害対策本部長の大役を担います。
(福井町自主防災連絡会 大開覚会長(61))
「きょうは、あなた中心に福井町は回ります。自覚と責任をもって毅然とした態度で、職務をこなしてください。お願いします」
続いて、各グループの班長となる5年生も災害対策本部のベストを着用し、下級生たちを連れて一時避難場所となる高台へと移動しました。
一方、体育館では6年生が災害対策本部を開きました。
各グループからの無線連絡を受け、全員の無事を確認します。
(災害対策本部長役 髙鶴陽生くん(6年))
「本部から各所。太平洋沿岸に発表された大津波警報が解除されました。周辺の安全を確保し、福井小学校体育館へ二次避難をして下さい」
各グループが体育館に二次避難してくると、災害対策本部の6年生は避難者名簿の作成に取り掛かります。
(福井町自主防災連絡会 大開覚会長(61))
「(保護者から)電話がかかってきて、『うちの子がここにいるか』と聞かれたときに、名簿を探すと(ここに)来ているかどうかわかる」
続いて、グループごとに分かれ、ダンボールベッドや簡易トイレ作りに挑みます。
慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、みんなで協力して作り上げていきました。
作業を終えると、待ちに待ったお昼の時間です。
地元婦人会の皆さんが用意してくれたこの日のメニューは、ドライカレーとホットドッグでした。
「おいしい」
訓練の緊張も解けたのか、みんな夢中になって頬張ります。
訓練を終えて・・・
(福井小学校 吉積清校長)
「昨夜、津波注意報が出て、本当に訓練なのか本番なのか、ものすごく緊張していました」
(国尾修人くん(3年))
「(訓練は)初めてで、本当に(災害が)あったら、みんなと協力して頑張りたいです」
(東堂楓さん(5年))
「下級生をまとめないといけないという緊張感が、すごくありました。自分の命は、自分でしっかり守れるようになりたい」
そして、災害対策本部長の大役を務めた髙鶴陽生くんは。
(災害対策本部長役 髙鶴陽生くん(6年))
「きょう学習したことを、今後に生かしてやりたいと思いました。自分が一番に行動できるように、シミュレーションとかを家でもしてみたいです」
次世代の防災リーダーを育てたいという想いも込めて、今回の訓練を行ったという大開会長は。
(福井町自主防災連絡会 大開覚会長(61)
「(子どもたちが)大きくなったときに、地域の役に立つ人間になって欲しいなという思いはありました。きょうの子どもたちの顔を見ていたら、(訓練を)する前とやった後で、ぜんぜん目の輝きが違っていました。受け取ってもらえたことは、たくさんあったと思います」
大開会長が感じたという子どもたちの変化。
それはきっと、この訓練で学び成長したことの証で、災害から自分と人々の命を守る力になることでしょう。
なお、阿南市によりますと、市内の自主防災会で実際に活動している人は軒並み高齢化が進んでいて、若い防災リーダーを育てることは、大きな課題となっています。
大開会長は、今後はインフルエンザや新型コロナの状況を見て、中学校や保育所、そして住民も交えて訓練を行いたいと話していました。