改めて「ハンセン病を学ぶ」国立療養所・菊池恵楓園を緒方太郎キャスターが取材
入所者の男性が語ってくれたのは、生き残ってきた人たちの「最後の役割」です。
感染力が非常に弱いにも関わらず、過度に恐れられていたハンセン病。
約90年にわたる国の「隔離政策」によって、患者は療養所に閉じ込められました。
その1つが合志市にある菊池恵楓園です。入所者の平均年齢は87歳。自治会の副会長、太田明さんにお会いしました。
■恵楓園入所者自治会・太田明副会長(80)
「物はなくしたらなくなりますけど、ずっと保存して伝えることは、後世の人がハンセン病問題を考える手立てになるじゃないですか」
太田さんが願うのは、隔離政策の歴史を後世に伝える建造物の保存です。その建物を初めて見に行きました。
1917年に建てられた「旧監禁室」。
■原田寿真学芸員
「こちらは療養所の中でも特に刑務所のような感覚を持って入所者に認識されていた場所であるというのが言えるのではないでしょうか」
戦後まもない時期まで、職員の命令に背いた入所者を閉じ込め監禁していたとされています。壁には…
「二月、逃走して四十日監禁された」
人権侵害の実態を今に伝える文字が残されています。これらの恵楓園の建造物を巡って、大きな動きがありました。
■原田寿真学芸員
「歴史的建造物等の保存事業の対象としてリストに上がりました」
旧監禁室を含む10の施設が、今年の3月に厚生労働省の「歴史的建造物」の対象に選ばれました。
国が長期保存のための予算措置を行います。
林の奥に見えた壁もその1つ。無断で外出することを禁じた「隔離の壁」。体も心も社会と隔てられていたことを実感させられました。恵楓園自治会では、園内のほかの施設も歴史的建造物に選んでほしいと願っています。
■恵楓園入所者自治会・太田明副会長
「歴史的建造物の認定というのは非常に重いと思いますよ、国が認定するわけですからね。我々自治会活動の我々の役割かな。生き残ってきた者たちの最後の役割だなと思っていますね」