「原因は長時間労働か」自ら命を絶った男性巡査 交際相手の女性警察官が感じた異変
今から7年前、熊本県警の男性巡査が自ら命を絶ちました。遺族は長時間労働が原因だったとして賠償を求める裁判を起こし、4日に判決を迎えます。長時間労働が自殺の原因だったのか。男性巡査と交際していた現職の女性警察官が、カメラの前で当時の状況を証言しました。
■渡邊美智代さん
「(警察学校の)入学式の写真です。一番喜びにあふれていて、緊張している写真になりますよね」
渡邊美智代さんが振り返るのは、写真の中の息子・崇寿さんの思い出です。高校を卒業後、父の背中を追って警察官になった崇寿さん。しかし、それから5年。念願だった刑事課に配属されて5か月後の2017年9月、崇寿さんは駐車場に止めた車の中で自ら命を絶ちました。24歳でした。
崇寿さんの遺書には「すみません。つかれたので休みます。死んで地獄にいくのも怖いですが、明日がくることがもっと怖いのです」と記されていました。なぜ息子は亡くならなければならなかったのか…遺族が原因を調べる中で明らかになったのが、崇寿さんの長時間勤務の実態でした。
崇寿さんが交際していた先輩の女性警察官に送ったLINEには、「最近0時過ぎに帰るのが普通になっててやばいです」、「昨日は5時出勤、1時半退庁、4時就寝でキツかったんです」、「書類はたまる一方です。キャパをオーバーしてますが言えません」というメッセージが。
女性警察官は崇寿さんの異変を感じ取っていました。
■交際していた女性警察官
「めったに弱音というか愚痴も言わないんですけど、もうクタクタですとか、仕事してないから爆発しそうとか、もうどんどん仕事で、今振り返ると追い詰められている状況」
母の美智代さんは2019年、公務員の労災=「公務災害」にあたるとして適用を申請。翌年、業務上の負荷から精神疾患を発症して自殺に至ったと考えられるとして、公務災害に認定されました。
認定された時間外労働は、亡くなる直前の5か月間は月平均157時間(4/4~8/31)。多い月は185時間と、過労死ラインの月80時間を大幅に超えるものでした。
美智代さんと崇寿さんの兄妹は、県警から謝罪や説明が得られなかったとして提訴に踏み切りました。
■渡邊美智代さん
「熊本県民のために頑張りたいと言って警察官を志した彼に対して、申し訳ないという気持ちでいます」
裁判で遺族は、過酷な勤務により精神障害を発症したと主張。「常軌を逸する長時間労働により自殺に追い込んだ」などとして、7800万円余りの損害賠償を求めました。
これに対し県警側は、長時間労働については認めた上で、負担の大きな仕事はさせておらず、業務が原因で精神障害を発症したとは断定できないと主張。体調把握に努め、必要な対応は取っていたなどと反論しています。
過酷な長時間労働が自殺の引き金になったのか?交際していた女性は、裁判で崇寿さんが仕事で追い詰められていったと証言しました。いまも県警に所属しながら証言台に立ったのは、二度と同じ苦しみを生んではならないとの強い覚悟があったからです。
■交際していた女性警察官
「休める時って必ずあると思うので、上司とか上に立つ人が気にかけてあげて、最近休んでないねとか、そういう一声があるだけでも全然変わるのかなと思います。警察の組織はやっぱり昼夜を問わずっていうところがあるので、組織全体としてそういういい風に変わってほしいなと思います」
崇寿さんの死から7年あまり。
■渡邊美智代さん
「自分で一度決めたら投げ出すことがなくて、最後までやり遂げるという芯の強い彼でした。とにかく彼の名誉を回復してあげたい。それが一番ですよね」
判決は4日、言い渡されます。