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【カラフルDAYS】トランプ政権“多様性”にNO…黒人差別と戦った女性の今 一方「差別より生活」黒人男性の本音も――『every.特集』

2025年2月13日 17:11
【カラフルDAYS】トランプ政権“多様性”にNO…黒人差別と戦った女性の今 一方「差別より生活」黒人男性の本音も――『every.特集』

トランプ大統領就任後、これまでの“多様性を推進”から逆行する動きが進むアメリカ。今後、“差別”はどうなるのか。かつて人種差別撤廃を求め、弾圧された黒人女性の思いを取材しました。

先月、アメリカの首都ワシントン近郊で起こった航空機とヘリコプターの衝突。67人が犠牲になった事故に、トランプ大統領は―

――トランプ大統領「連邦航空局は 重度の知的障害や精神疾患のある労働者を積極的に採用している」

事故が起きたのは、社会的マイノリティーに配慮した雇用など、「多様性」を推し進めた政策のせいだと主張しました。

今月初めには、女性のスポーツにトランスジェンダーの女性が参加することを禁止する大統領令にサイン。

――トランプ大統領「今後、女性のスポーツは女性だけのものになる」

アメリカでは、トランプ政権発足後、“多様性を認めない動き”が加速。大統領選での勝利が伝えられた翌日から、黒人などの携帯には、正体不明の送信者から人種差別的なメッセージが次々と届きました。「あなたは農園で綿花を摘むために選ばれました。奴隷使用人が迎えに行きます」というような黒人奴隷制度を思い起こさせる内容のメッセージは少なくとも全米32州で確認されています。

長い間、黒人への差別が根強く残るアメリカ。

私たちは、かつて黒人たちが平等な権利を訴え闘った、アラバマ州のセルマへ。ここは今から60年前、大規模な抗議活動が繰り広げられた地です。

当時、南部ではキング牧師らが、投票権や人種差別撤廃を求める公民権運動を展開。この動きに白人は猛反発し、黒人への攻撃は激しさを増していきました。

わたしたちは、その時代にキング牧師らとともに弾圧と闘った女性のもとへ。

リンダ・ブラックモン・ロワリーさん74歳。7歳の時に亡くなった母親は黒人であるがゆえに、病院で治療を受けられなかったといいます。

――リンダ・ブラックモン・ロワリーさん「私たちは違うものとして扱われ、肌の色が異なるという理由で嫌われているということを幼いながらに知ったのです」

「この状況を変えよう」と誓ったというロワリーさん。1965年3月。14歳のときに黒人の投票権を求めるデモ行進に参加します。しかし、数百人とともにセルマから州の中心部に向かう途中で、悲劇が起きました。

――ロワリーさん「道路にアラバマ州警察が並んでいるのが見えました」

橋の向こうには、黒人のデモ隊を行進させまいと白人の警官や騎馬隊が待ち構えていたのです。

――白人警官「行進は中止だ。戻りなさい!」

無抵抗のデモ隊に警棒をふりあげ、催涙ガスを発射する警察。その時でした。

白人警官に蹴り飛ばされ、倒れ込む少女。

――ロワリーさん:「これが私です。倒れながら警官に蹴られたんです。白いジャケットに黒いスカートをはいています」

ロワリーさんは警官に殴られ、目の上など35針を縫う怪我をしたといいます。

――ロワリーさん:「保安官は小さな野球バットのようなもので私を殴りました。その隣の保安官は私を殴り、蹴りました。あのときの映像を見ると当時の光景が脳裏によみがえります」「私は14歳でした。私は誰に対しても脅威ではありませんでした。今でも私が涙を流す理由は、あの日の肉体的・精神的な傷痕が残っているからです」

白人が黒人に暴行を加える映像は、全米のテレビで報道され、当時の社会に衝撃を与えました。映像をきっかけに世論は人種差別撤廃へと動きます。

しかし、60年たった今再びー。

――トランプ大統領:「あらゆる場面に、人種や性別を組み込もうとする政府の方針を終わらせます」「肌の色にかかわらず能力主義に基づく社会をつくります」

トランプ大統領が就任翌日に署名したのが、“人種や性別による優遇措置を停止する”という大統領令。

これはたとえるならば、フェンス越しに野球をみようとする3人の身長がバラバラだったとしても、全員に与えるのは同じ高さの台。

背の低い子供が野球を観戦できない状態でも、全ての人に同じ機会を与える「能力主義」であるべきだとトランプ大統領は訴えているのです。

これまでバイデン政権では、誰もが同じ条件で野球を観戦できるよう背の低い子供には高い台を与えるなど、個人の境遇に配慮していましたが、トランプ大統領は、特定の人を優遇すべきではないと主張しています。

黒人の権利を得るために戦ったロワリーさんは、トランプ大統領の考えを受け入れられないと話します。

――ロワリーさん:「(大統領は)全てを変えようとしていますが、多様性や公平性を奪っても、人の心は奪えません」

ただ、ロワリーさんのように考える人ばかりではありません。今回の選挙では、黒人票がトランプ氏に流れたことが、大統領に返り咲いた一因に。AP通信によると、トランプ氏を支持する黒人男性の割合は2020年の大統領選と比べて2倍になっています。

南部ジョージア州、黒人共和党協議会の、アザド・アーマディさん。元々は民主党を支持していましたが2016年からトランプ大統領を支持することにしたといいます。

――ジョージア州黒人共和党協議会アーマディさん:「民主党の政策は結果を出していないのです。黒人アメリカ人は、社会的にも経済的にも底辺にいます」

貧しい黒人のために動いてくれる、“実行力のある”トランプ大統領に期待をよせています。

ーーアーマディさん:「トランプ大統領が権力を行使し、国民の生活を改善し、安全な環境を作り出すために重要なことを成し遂げてくれることを期待しています」

今アメリカは、歴史的な物価高により、生活不安が大きく広がっています。差別と闘うことよりも、明日の生活を少しでも良くして欲しい。そうした思いから、トランプ大統領を支持する黒人男性が増えているのです。

差別と闘ったロワリーさんはー。

――ロワリーさん:「私たち人類はもっと互いに思いやりを持つべきです。本当に必要な変化は心の変化です。それは個々人の問題です。私たちの子供や孫のために、より良い社会を望むのであれば、私たち自身が変わらなければなりません」

(2025年2月13日放送「news every.」より)

最終更新日:2025年2月14日 16:01