多様性“尊重しすぎ”は「間違った認識」トランプ政権で企業のDE&I後退も…日本企業で「多様性は必要不可欠」な理由
◾️「人種」や「性別」の多様性排除へ…トランプ大統領の就任演説
経済部デスク 安藤佐和子解説委員:驚きの連続で、こんな発言をしていました。
──私は今週、公私のあらゆる場面に「人種」と「性別」を社会的に組み入れようとする政府の政策を終わらせます。私たちは、能力に基づいた社会を築きます。よって今後は、性別は「男性」と「女性」の2つだけというのがアメリカの公式方針です。
アメリカではこれまでパスポートなどの身分証明書の性別欄は男性と女性以外にもXが選べるようになっていたんですが、それが「無し」となるということです。アメリカが今まで進めてきた多様性の推進と逆行する動きですよね。
庭野:アメリカ最大のLGBTQの権利擁護団体は声明で『我々は引き下がることも言いなりになることも拒否する。これらの有害な措置に全力で反撃する』と述べています。
■アメリカで進む多様性目標撤回の動き
安藤:DE&Iという言葉があります。日本語にすると多様性(=Diversity)、公平性(=Equity)、包摂性(=Inclusion)。人種、国籍、性別、年齢、障害の有無、宗教、文化、そういった違いにかかわらず、多様な人たちが生きやすい社会をつくろうというものです。その実現のため、米企業などは白人ばかりに偏らないようにと、白人以外の人の採用を増やしたり、あるいは役員の中で女性の割合を何%以上と定めたりというような数値目標を作って発表していました。
庭野:それがトランプ氏の就任で変わってしまっているのですね。
安藤:次々と有名な企業が多様性目標を撤回したり縮小したりしています。ボーイングやウォルマート、アメリカの日産、マクドナルドアメリカ本社など有名な企業が、数値目標の撤回やDE&Iを推進するイベントへの協賛取りやめ、DE&I推進の実績を第三者機関に提示することをやめるなどの動きが相次いでいます。
庭野:アメリカは日本よりもかなり理解が進んでいる中で、なぜこの動きなんでしょうか?
安藤:トランプ氏は第一次政権のときに「人種と性別のステレオタイプとの闘いを終わらせる大統領令」を出しています。その中身は、「人種差別をしないようにするトレーニング教材などが、逆に白人を悪者にして、社会を分断させるから、けしからん!」というようなことでした。
また、これとは別に保守派の団体が起こしていたアファーマティブ・アクションに反対する裁判もあり、2023年にアメリカ連邦裁判所から「憲法違反」という判決が出ました。当時大統領であったバイデン氏は「残念だ」と遺憾の意を示した一方、トランプ氏は「アメリカにとって素晴らしい日になった」と声明を出しています。