山と人をつなぐ 登山道たどり 北アルプス最深部へ【後編】
ガーズ・クリエイティブ 北川博之社長
「救助要請ありです。一般登山者は転倒により頭部負傷、了解」
負傷者を発見し、無線で県警山岳警備隊に救助を要請しました。
ガーズ・クリエイティブ 北川博之社長
「頭部強打で出血あり、目の上も多少切れております」
「どっから転ばれたんですか?」
「この上の道のところ」
「で、ここまで落ちてこられた10mほど?」
「うん、ゴロゴロと」
数家直樹解説委員
「滑落した男性がいました。おそらくこのあたりから落ちたのではないかと思われます。大体10mぐらい滑落しているでしょうか。自力での歩行はできないと本人が訴えています」
見たところ、特につまづきやすいような所もない登山道。こうした場所でも危険が潜んでいるのです。
最初の通報からわずか20分後、県警山岳警備隊員が現場に到着しました。
「大丈夫です? 何か意識失ったとかそういうのないです? 転んだ時に」
「そこからちょっとゴロゴロと」
「これは結構、血すごいですね」
「ちょうど角が当たった。岩の角が当たった感じ」
「防災ヘリ要請しております。現場の座標を送ってください」
「はい、送ります、ノース36の36…」
数家直樹解説委員
「山岳警備隊2人が到着したので私たちはこの先へと進むことにします」
平蔵谷の出合いで、雪渓が解けた時に歩く夏道に張ってあるロープを点検します。
ガーズ・クリエイティブ 北川博之社長
「オッケー、そしたら次に行こうか」
「ここは管理者不在の登山道ですよね」
「そういうことになりますよね。でも、ここを通さないと真砂沢ロッジにも行けないし、仙人池ヒュッテにも行けないし、重要なルートなんですよ」
「仕事でやるようになるとすると、そこの資金はどうするのか?」
「資金は県と話しします。県庁と話して、どれぐらいかかるか、大体概算の見積もりとって、見積書を出して、それでOKであれば仕事を受けるという格好になるんですけど」
先ほどの男性を救助するため、県の消防防災ヘリが到着しました。
さらに進むと現れるのが、「スラブ」と呼ばれる滑らかな一枚岩。表面に凸凹が少ないため、滑りやすいので危険です。ここはロープと、岩に打ち込まれたボルトを頼りに通過します。もし滑落すれば、暗い雪渓の下に吸い込まれることになります。
こうした雪渓も神秘的な表情を見せてくれます。
数家直樹解説委員
「ここは管理者不在の登山道、雪渓の上を歩くんですが、分かりやすいようにと、目印が示してあります」
これを管理しているのは、登山道上にある真砂沢ロッジです。
真砂沢ロッジ 坂本心平代表
「特に雪渓は、最近、温暖化のせいかどうか分かりませんけども、解けは早いもんですから、非常に雪渓の変化が大きくなっていますので、かなり頻繁に見に行かないと、以前、安全だった場所が3日後には、もうすごく危険な状態になっていることもありますので。こちらの小屋にいらっしゃる方、皆さん通られますんで、そこが危険な状態だと、はい来てくださいっていうわけには言えないと思いますから」
これまで管理者不在の登山道でも、山小屋が責任を持って維持・管理してきました。コロナ禍による経営悪化や担い手不足で小屋の負担は増えていますが、登山者の安全のための取り組みが変わることはありません。