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シリーズ「山と人をつなぐ」 登山道と環境保全の調和へ

2024年6月13日 21:04
シリーズ「山と人をつなぐ」 登山道と環境保全の調和へ

山と人をつなぐ“登山道”。エブリィでは、8月11日の山の日に向けてこの登山道に携わる人たちの取り組みをシリーズでお伝えします。取材している数家解説委員です。

数家解説委員
1回目のきょうは、登山道と環境保全の調和についてです。県が計画する登山道の再整備に対し環境省は高山植物を保全する立場から工事方法を見直そうと近く、双方で協議を始める予定です。11日に行われた現地視察に同行取材しました。

目指したのは、北アルプス・薬師岳の登山口から歩いておよそ2時間、標高2000mの地点です。

数家解説委員
「登山道はここから下がまだ整備されていない状態です。どんな登山道にしたら環境にやさしいかを有識者や専門家の皆さんが事前調査しています」

県が整備を予定しているのは、中部山岳国立公園内の登山道・折立太郎山線のうちおよそ100メートルの区間。
歩きやすいよう組まれていた木や石が崩れているほか、登山道自身が侵食でえぐれて脇にある高山植物にも影響を与えていました。
すでに県が工事の計画を立てていますが、環境省は高山植物の復元などにより配慮した方法を検討し、県と協議しようというのです。

勝俣隆さん
「植生復元がもう少し手を入れられたら、登山道のそばまで植物が本当は来てほしいですよね」

環境省が招いたのは。登山道コンサルタント会社の勝俣隆さん。えぐれた登山道の修復方法を提案しました。

勝俣さん
「例えば上にあった蛇籠のステップじゃないけど、蛇籠の道、組めるんであれば、高さ稼ぎつつ、施工もできるかな」

その蛇籠の道がこちらです。針金の籠の中に石を入れて造った道です。

環境省 立山管理官事務所 中森健太さん
「こういった形のもので入れておいた方が長期的に長持ちもするし、ここぐらい土砂の排出量が多い場所だったら、蛇籠の方がいいんじゃないかという意見も出てたんですけど、石をこれだけ集めてくるというのが大変なので、そこが今ちょっと施工面で課題だねっていう話をしてたところです」

工法にも一長一短があり、何を優先して選択していくかが重要なポイントです。

さらに、問題は直接、登山道の上に現れるだけではありません。

数家解説委員
「ここだけ植物ないですね」

県自然保護協会 大宮徹さん
「上の方にずっと削れている沢が見えますけれども、上の方で崩壊した破壊した奴がどんどん下へ下へ流れてきて、この辺に堆積しているわけです」

今回の調査に参加した県自然保護協会の大宮徹さんです。流入した土砂は高山植物を埋めてしまい、今も大雨のたびに流入が続いているといいます。

大宮さん
「何しろ登山道から離れているので、気が付かないうちに、どんどんこうやって堆積してしまうことがあるんですよ、登山道というのは上から一体的に見て水の流れですね、流域として見て、どういう影響があるか、どういうことをしなければいけないのかというのを考えなければいけない」

一度、失われた高山植物が再び地面を覆うには、50年近くかかるといいます。単純に登山道だけを整備するのではなく、将来的な植生の復元も視野に入れて進めなければならない難しさがあります。

環境省 立山管理官事務所 中森健太さん
「生態系の保全の対策という所をある程度重きを置いて、県の方ともどういった対策で周辺が緑化していって、歩道の部分の維持も負担を軽減していけるかという、この2つの2点に関して協議していきたいなと思います」

県は、可能な限り反映できるよう環境省と協議したいとしています。

上野キャスター
どうしたら持続可能な登山道にできるか模索が続いているんですね。

数家解説委員
雨が降れば登山道は、水の流れる川となり、土を削って侵食が進みます。それをどう食い止めながら周辺の自然に溶け込む登山道とし、さらには植生も回復させていくか、様々なことを考慮することが必要なのです。

上野キャスター
エブリィでは、8月11日の山の日に向けて登山道に携わる人の取り組みをお伝えしていきます。

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